【ピアノと調律】のメルマガ・バックナンバー 08年1月30日
今日のメルマガ執筆者
高木ピアノサービス (兵庫県西宮市)
あれは、2001年も暮れのことでした。
いつもの調律のお客様を訪問していると、
お隣の方が来られて、いきなりこう尋ねてくるのです。
Aさん:『高木ピアノさんでは、いくらで調律をするの?』
高木:「どうかしましたか?」
Aさん:「ちょっと、調子が悪いんです」
Aさんのピアノは、ヤマハのアップライトピアノ U1。
このピアノは、Aさんの奥様のお母さんが使っていたもの。
そのお母さんが弾かなくなってからは、
調律もしないでずっと放置されたままだったようです。
そして、Aさんのお子さんが習い始めたのをきっかけに、
そのピアノを実家から運んできた、とのこと。
何かトラブルを起こしているようなので、私は、どんな状態なのか
聞いてみました。
高木:「どこのピアノですか? カワイとかヤマハとか?」
Aさん:「ヤマハのピアノです」
高木:「どんな感じですか?」
Aさん:「え~とですね… 鍵盤が何カ所か上がりにくいし、音も何カ所か出ないんです」
高木:「ところで、調律は、いつ頃されました?」
Aさん:「去年、運送屋さんにピアノを運んでもらった時です。調律もセットで頼みましたので、同時に…」
高木:「その調律師さんて、どこの方かわかりますか?」
Aさん:「さぁ~、運送屋さんが手配してくれたので・・・」
高木:「そうですか・・・」
話を聞いているだけでは、らちがあきません。
とにかくピアノを見せて頂くことになり、お隣のAさん宅へ伺いました。
お伺いすると、唖然!
なんと、ピアノの音程が半音ずれています。
ドの音の鍵盤を叩いても、出てくる音はシの音です。
パネルを外し、内部のアクションも点検です。
確かに、音は出にくいし、鍵盤も数カ所上がってきません。
去年、調律をしたそうですが、
その間に半音も下がることは、ちょっと考えられません。
ピアノ調律師がきちんと仕事をすれば、
こんなことは起こらないからです。
ピアノ調律師が手を抜いたのか、
あるいは、なんらかの事情で仕事が中途半端にならざるを得なかったのか。
そう考えざるを得なくなります。
これは、あくまでも想像ですが・・・
担当したピアノ調律師が良心的な人ならば、
こう考えたのかもしれません。
運送会社から指定された仕事内容と時間では、
丁寧にみてあげたくてもできなかった。
良心的でない人なら、単純に、
めんどうだ、余分な仕事はしたくない、とおもったのかもしれません。
そのピアノは、購入してから40年くらい経っていますが、
Aさんは買いかえるつもりはなく、修理をしたいとのこと。
Aさんと相談しながら出した見積もりは、
調律と修理で15万円ほどになりました。
それから、
アクションと鍵盤を自宅の工房に持ち帰り、悪戦苦闘の2週間。
その後、納入し、
調律と整調を無事終えることができました。
これだけすべき仕事があったのですから、
引越しとのコミコミサービス調律の範囲内では、
ちょっと難しいでしょう・・・
さて、運送会社に引越しと同時に調律を頼む場合、
調律が格安になるか、あるいは無料になることがよくあります。
これは一見、メリットばかりにおもえます。
でも、今回取り上げたようなケースの場合、
特に注意が必要です。
つまり、引越しさせるピアノで、
長年調律していなかったり、修理が必要なケースです。
この場合、運送会社の調律コミコミサービスでは対応しきれない、
といったことが起こる可能性があります。
ピアノの状態がよくないまま、済まされる危険があるのです。
もしどうしても引越しとのコミコミサービスで調律を依頼したい場合は、
予め業者とサービスについてよく話しをしておきましょう。
長年調律していないピアノの場合、
どこまで調律してくれるのか。
修理が発生するような場合、
料金はどうなるのか、調律は延期してもらえるのか。
(通常、修理の後、調律をするからです)
といったことを、具体的に担当者と相談します。
必要なら、文書で取り決めを交わしておきましょう。
こういった話し合いでお茶を濁すようなら、
その業者は、避けたほうが無難です。
もう1つの選択肢としては、
引越しと調律を別々に頼むことです。
この場合、予算はいく分高くなるでしょう。
しかし、調律は、信頼できるピアノ調律師に頼んでおけば、
メンテナンス上、安心できます。
長年ピアノのメンテナンスをしておらず、
お子様がこれからピアノを始めるような場合なら、
なおさらそのほうがよいでしょう。
さて、
もちろん、今日ご紹介したようないいかげんなケースばかりではありません。
きちんとしたサービスを行う引越し業者さんもあります。
まじめにいい仕事をされている運送会社さんとピアノ調律師の名誉のため、
最後にこのことを申し添えておきます。
高木ピアノサービス (兵庫県西宮市)
高木
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●編集後記
こんにちは、編集者の新井です。
先日、ヨーロッパピアノをメインであつかっているピアノ調律師さんとお会いする機会がありました。
グロトリアン、べヒシュタインなどについて、その良さとか、作られている工房や方法、日本のピアノとの構造上の違いについて、めったにきけないいろいろなお話をきかせてくれました。
「最高級の材料をつかっていても、ダメなピアノもある。ピアノの出来不出来は、結局最後には総責任者である職人の”観”で決まる!」
という話が、いちばん印象的でした。
国産ピアノとスタインウェイしか弾いたことのないわたしには、もう、その話だけで夢がふくらみ、堪能してしまったのですが・・・
それでも、いつか日本各地、そして世界のコンサートホールやピアノ工場めぐりの旅にでてみたいなぁと、帰り道に思いはさらにふくらんだのでした。
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