ヤマハやカワイのアップライトピアノは、昭和時代のほうが品質が良いか?

YAMAHA piano
  • ヤマハやカワイのアップライトピアノは、今のものより昭和に作られたもののほうが、品質が良いという話を聞きます。素材などは違うのでしょうか? また、音質についてはどう違うのでしょうか?

今回はこういった質問を、ピアノ調律師さんにぶつけてみました。

ヤマハやカワイのアップライトピアノは、昭和時代のほうが品質が良いか?

ピアノ調律師さんからの回答をご覧ください。


質も悪くなり、工場の自動化により、味の無いピアノが大量に生産され

Music TAKANO

Music TAKANO
(茨城県水戸市六反田町)
 阿久津さん

先ずは昭和の時代は、国内でバッカボードやバーチクルボードを作っていて、工場の工員の熟練度もかなり良好でした。

会社の経営状態が悪くなると、熟練工員を大量リストラして工場の設備投資を初めて、形作って魂いれず状態になりました。

当然質も悪くなり、工場の自動化により、味の無いピアノが大量に生産されましたね。今では売る物さえ生産できなくなりつつあります。

残念な事ですね。更に少子化とコロナで大打撃ですね、更なるメーカー努力が望まれますね。


カワイの昭和40年代からのアクションは木製から樹脂に代かえ

立川ピアノ調律技研

立川ピアノ調律技研
(神奈川県藤沢市本鵠沼)
 立川さん

私は昭和42年より調律の勉強を始め、45年より調律師として仕事をはじめました。技術を学んだ所はヤマハでもカワイでもありませんので忖度はありません。

現在私の顧客の80%がヤマハで20%が他社です。

私が今調律させて戴いている一番古いピアノはカワイです。2本ペダルの昭和35年頃の縦型ピアノが3台。2年前まで伺っていたお客様は昭和20年代か? それ以前のグランドピアノ(オーバーホールをした物)をお使いになられていました。

その他に木製のアクションブラケットの縦型ピアノを2台調律しております。そのうちの1台は「芥川也寸志が学生時代にこのピアノを弾いたのよ」と聞きました。古いですね。

カワイの古いピアノは皆さん愛着があるようでお使いになられている方が多いようです。ヤマハでは昭和39年の東京オリンピックの年のU3が現在一番古いピアノです。

最近は新しいピアノに出会う機会が少なく? イヤまったく無くなり、今の2社の状態が分かりませんが、今までの不満は幾つかあります。

ヤマハの巻き線は全くだめ!! まるで座布団を弦の上に乗せているようです。

昭和30年代のヤマハのハンマーは薬品でコチンコチンに固められカチンカチンの音! 鍵盤下のバックレールにはフエルトをケチってスポンジに代替え、20年たたずにフエルトに交換。客は出費だ。

カワイの昭和40年代からのアクションは木製から樹脂に代かえステックが多く発生。求めやすい価格のピアノには手抜き。ハンマー高音部はビョウ無し、そのため20年以上たつとハンマーフエルトがポロポロと落ちる!

それでも世界に躍り出たヤマハ、カワイはすごいですね。


昭和時代だから良い、新しいから悪いとは決して言えません

前田調律事務所

前田調律事務所
(和歌山県和歌山市松ケ丘)
 前田さん

わたしもその様な話をよく聞きます。

実際、新しいピアノや古いピアノを触ってきて感じるのが、昭和時代に作られたピアノの多くは、今でも現役で十分に使えるピアノが多いということです。

音色、弾き心地等、新しいピアノより良い、と思うことも多々あります。

もちろん年数が経過しているため、消耗部品を交換しなければならないことは多いですが、ピアノそのものの作りはしっかりしているように感じます。

材質については、製造にかかわっているわけではないので分かりかねますが、やはり最近は環境問題の面から、良質な木材を入手するのが困難になっているのかも知れません。

それに比べ昔は良い木材を入手しやすかったと思います。現在でも高価なピアノはそれなりの材料を使っていると思いますが、それに比べると安価なピアノは材質も良くないかもしれませんね。

音質については、昭和時代のピアノの多くはピアノ全体が良く響いている、明るい、という印象です。

それと比べると新しいピアノの中には、なんとなく音にもやがかかっているように感じるものもあります。

弾き込めばもっと音が鳴るのかもしれないのですが、ピアノの材質の違いが出ていると思うこともあります。

とはいえ、昭和時代だから良い、新しいから悪いとは決して言えません。大切なのは、自分で弾いてみて音を確かめ、気に入ったものを選ぶということです。

音が良く分からない場合、信頼できるピアノの先生や、調律師さんにアドバイスをもらい、選ぶとよいでしょう。


昔の方が良かった部品も有れば今の方が良い部品も有る

ピアノ調律さん 談

主に中古ピアノを販売している調律師なので「昔のピアノの方が良いですよ」とはよく言ってます。

私はヤマハ出身なのでヤマハの人に聞いた話です。

音色に大きな影響を与えるハンマーフェルトですが昭和の終わり頃から世の中で「酸性雨」が問題視されてきました。

今の羊は酸性雨で育った草を食べているのでフェルトの質自体が良くないそうです。フェルトは羊毛を叩いて作ります。叩くうちにキューティクルが絡み硬くなっていきます。(これを縮絨と言います)

ところが今の羊毛はキューティクルが良くないので縮絨しないのです。固まらないので薬で固めます。

本来の縮絨したフェルトと薬で固めたフェルトのどちらが良いでしょうか? という選択です。

昭和50年代には浜松駅近くに貯木場があり、大きなプールに輸入した原木が浮かんでました。また、磐田市には製材所があり広いグラウンドに製材された木材が野積みになり自然乾燥されていました。

今ではそれらの工場は無くなりある程度完成された部品を海外から輸入されたものを国内で組み立てるという工程に変わっています。

国内で原木から加工していたから良かったのか? 実際には貯木場のプールに海水が混じってしまい木材が塩分を含んでしまい製品後錆が出るというピアノも有りました。

昔の方が良かった部品も有れば今の方が良い部品も有ると思います。

その組み合わせなので難しいところですが、調律師として言えるのは昔から比べるといろんなところで最近はコストカットされているな、という感想です。



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