ピアノ調律の頻度ホントの話、定期的な調律の必要性は?

調律の頻度は、年に1回が一般的です。ただ、この年1回という頻度はホントに正しいのでしょうか?

いわゆる、ピアノ業界や調律師さん的には、年1回の調律が一般的な方が何かと都合が良い、なんてことはないのでしょうか。

この記事では、この問題をとりあげ、理想的な調律の頻度について考えてみたいと思います。

何のために調律をするの? 調律をしないとどうなるの?

調律をしないと次のような問題おきます。

  1. 正確な音程を維持できない
  2. 音程が理想の状態にたもてない
  3. 弾き心地が悪くなる
  4. 金属部品が錆び、フェルトの劣化・虫食い

順番に説明していきます。


正確な音程を維持できない

ピアノの弦には常に約70~90kgの力がかかっています。この弦がピアノの音をだすわけですが、弦は温度や湿度の変化などで、伸び縮みし、音程が少しずつズレてしまいます。そのままだと、狂った音程でピアノを弾くことになり、ピアノの練習にも悪い影響がでてしまいます。


音程が理想の状態にたもてない

調律しない期間が長くなってくると、音程が大きく下がった状態になります。その状態から、音程を理想の状態に戻す作業は、ピアノへの負担が大きく、リスクを伴います。そのため、作業を数回にわけて、少しずつピアノを理想の状態に戻していく必要性がでてきます。


弾き心地が悪くなる

ピアノの調律には、ピアノの弾き心地の調整といった作業も含まれます。調律しないピアノは、使用頻度にもよりますが、少しずつ弾き心地が悪くなっていきます。ひどくなると、鍵盤の動きが悪くなったり、最悪の場合、鍵盤が動かないなどのトラブルにつながります。


金属部品が錆び、フェルトの劣化・虫食い

日本のように湿度が高めの環境では、金属部品にサビが生じることがあります。

また、ピアノを弾いていると、少しずつフェルトが劣化してきます。また、フェルトは虫に食べられやすく、ボロボロになってしまうケースもあるようです。


調律とピアノ寿命、調律のしすぎはピアノの寿命を縮める

確かに調律をまったくしないと、ピアノのトラブルにつながりやすい、この点は確かにそんな気がします。

しかし、調律を頻繁にするのも、良いとは限らないようです。これについては、調律師さんの話を紹介します。


調律すればするほど痛む、調整はすればするほど長持ちする

谷口ピアノ調律事務所

谷口ピアノ調律事務所
(愛知県豊田市)
 谷口さん

調律はすればするほど痛む、という考え方があります。でも、調整は、すればするほど長持ちする。一見矛盾するようですが、私にとってはこの考え方は納得できます。

過度の調律のやり過ぎが良くないのは、チューニングピンが刺さっているピン板の穴が、回しすぎで緩んでしまうからです。また弦の屈折している所でストレスにより弦と鉄骨の支点(ベアリング)が傷んでしまうからでもあります。

調律の頻度もそうですが、内部の調整も寿命と大いに関係があるということです。

後は、整音、つまりハンマーを整形して音を整える作業をするかどうか。この提案をよくする調律師かどうかでも、変わってくるでしょう。整音はハンマーに針を刺したり、削ったりしながら適切な柔らかさにしていきますが、これをやればやるほど、良い音を維持できます。

でも、当然ハンマーの寿命はそれだけ短くなります。では、寿命を伸ばすために整音をしないほうが良いかというとそうでもなく、整音をせずにずっと硬いフェルトのハンマーで弦を叩いていると、こんどはボディー(鉄骨)と弦が痛みやすくなります。

ハンマーのフェルトも含めて、アクション機構の調整が悪いままのピアノは、過度な負荷がかかって、痛むのが早くなります。やはり、調整は重要です。


どうすれば、ピアノの寿命はのびるのか?

ピアノの森・調律工房

ピアノの森・調律工房
(埼玉県さいたま市浦和区)
 森さん

温度、湿度管理に尽きます。ふつうの日本家屋で、冬はストーブを使っているようなお宅でも、ピアノの状態が30年経ってもそれほど変わらないこともあります。

逆に20年でチューニングピンが緩んでいて、ダメージを受けていることもあります。これは、過乾燥によるもので、床暖房などが原因となっていることが多いです。

私の経験では、調律の回数によってチューニングピンのネジ穴が痛むというよりは、過乾燥による影響のほうが大きいと考えています。

調律は定期的に行ったほうが、弦が一定に保たれるので、ピンを戻す時に負荷がかかりにくいと思います。ホールに置かれているコンサートピアノが良い例です。常に一定の環境下に置かれている状態であり、30年以上経ても常に良い状態を保っています。このようなピアノは温度湿度を一定に保つ保管庫に保管されていて、ほぼコンサートのたびに調律されています。


ピアノの調律は年に1回も必要なのでしょうか?

では、いよいよ本題です。ホントにピアノの調律は年に1回も必要なのでしょうか? この章では、調律の頻度について考えていきます。


ピアノの音程の狂いや、ピアノ弾き心地が気になる方へ

まず始めに、ピアノの音程の狂いや、ピアノ弾き心地が気になる方については、当然ながら調律の頻度は多くなります。

  • ピアノの音程の狂いや、ピアノ弾き心地が気になる方
    → 半年に1回から年に1回くらい

ピアノの状態に応じた、最適な調律の頻度とは?

次にピアノの状態です。買ったばかり、新品のピアノの場合、音程が下がりやすく安定しません。購入から、3~5年程度経過していれば、音程が安定しているハズです。

  • 新品のピアノ(音程が安定しないように感じる場合)
    → 半年に1回から年に1回くらい
  • 購入から、3~5年程度経過し、音程が安定しているピアノ
    → 調律は年1回 or 調律を2年に1回にし、その代わり、調律と同時にタッチの調整をするといった感じで、調整を織り交ぜる
  • 古いピアノ or 長年放置されたピアノ
    → 調律師さんと相談(必要に応じて見積もりをとる)

普段からどのくらいピアノを弾くのか、に応じた調律の頻度

普段からピアノをよく弾くのか、弾かないのかによっても、必要な調律の頻度は変わってくるようです。

  • ピアノの先生のように毎日何時間もピアノを弾く
    → 半年に1回から年に1回くらい
  • ほぼ毎日30分から1時間程度、ピアノの練習をする
    → 年に1回くらい
  • 1週に2~3回、1回あたり30分から1時間程度、ピアノを弾く
    → 年に1回から2年に1回(調整を織り交ぜると良い)
  • ほとんど弾かない
    → 2年~5年に1回、ただし、ピアノの設置環境からの影響について調律師さんに相談

まとめ

この記事を書いていて感じましたが、普段からピアノを弾くのであれば、やっぱり調律は年1回が無難かなぁ~、と感じました。

それと、ピアノのことを大切に思っている調律師さんの場合、ピアノの設置環境を含めた、色々なアドバイスをしてることも多いようです。

ピアノの設置環境に問題がなければ、アドバイスがない場合もあるようですが、せっかく調律してもらうなら、設置環境について質問したり、ピアノを長持ちさせるコツなど、色々な質問をしてみると、良いと思います。

大切なピアノ、長く大事に使っていきたいですね。



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