ピアノ調律でピッチ(基音)はどのように合わせるべき?

ピアノ調律でのピッチとは、音の高さの調整のことを言います。音の高さは、周波数(単位Hzヘルツ)であらわされ、数字が大きいほど音が高くなります。

ピアノの場合、鍵盤の中央の「ラ」の音を基準音として、440Hzか442Hzのどちらかにあわせるのが一般的です。

試しにピッチを変えしまうと、戻すのに再度調律が必要になったりと、なかなかメンドウなようです。

この記事ではピッチの選び方や注意点について、まとめてみました。ぜひ参考にしてくださいね。

国際的な標準ピッチ440Hzについて

20世紀初頭までは、例えばフランスでは435Hz、ドイツでは440Hz、イギリスでは452Hzといったように、基準ピッチがバラバラでした。

そのため、1939年に開催された国際会議で、440Hzが基準ピッチに決まりました。

その流れから、今も440Hzが基準ピッチとなっていますが、その理由は次のとおりです。

  • 国際的な標準として広く認知されている。
  • 音楽の楽譜が、この基準音に合わせて作られている。
  • 440Hzは人間の聴覚に適した周波数である、と考えられている。

しかし、今クラシックの世界では、442Hzが主流に変わっています。これは、ピッチが高い方が華やかに聞こえるから、という理由からだそうです。

実際に、コンサートホールや学校のピアノなどは、442Hzで指定されることが多く、それにあわせて、ご家庭のピアノも442Hzが多くなっています。

しかし、電子楽器の多くが440Hzに合わせられていることから、ポピュラー音楽などでは、440Hzがいまだに主流で、少し不便なこともあるようです。

また、上の3つ目の「440Hzは人間の聴覚に適した周波数である」については、近年になって、この高いピッチが人間の健康に悪影響を及ぼす、といった意見が出てきており、議論中です。

このように、基準ピッチについては、絶対的な正解はありません。


ピッチ440Hz、442Hzの違いを聞き分けられるの?

では、ピッチ440Hzと442Hzでは、どのくらいの違いがあるのでしょうか? 聞き分けられるものなのでしょうか?

これについては、高名な調律師フランツ・モアが書いた『ピアノの巨匠たちとともに』に、ピッチに関する逸話が紹介されています。

この本で、フランツ・モアは「パーフェクト・ピッチなどというものは人間の耳にはありません」という言葉で、聞き分けられないと言っています。

実際のところ、440Hzと442Hzの差である、2Hzの違いを聞き分けるのは、かなり難しいようです。

参考文献:フランツ・モア(著)『ピアノの巨匠たちとともに』


ピッチはどのように決めると良いのか?

では、ご家庭のピアノのピッチはどのように決めたら良いのでしょうか。これについては、いくつか決め方があります。

  1. 他の楽器と演奏するかどうか
  2. 現在のピッチを確認した上で決める
  3. 好みの音色にする

順に説明します。


他の楽器と演奏するかどうか

他の楽器と一緒に演奏する場合は、ピッチを統一する必要があるので、それらの楽器にあわせることになります。

この場合、440Hzと442Hzのいずれかになると思いますが、日本のジャズでは441Hzが指定されることがあるようです。

そのため、演奏する音楽のジャンルによっては、念のため確認が必要かもしれません。


現在のピッチを確認した上で決める

現在のピアノのピッチが442Hzなら、そのまま442Hzにする、といった感じです。基本的にピアノへの負担が一番少ないパターンです。


好みの音色にする

好みの音、例えば高い音が好きなら、ピッチを高めに、と言った感じの決め方です。

ただし、ピアノの音を好みの音に近づけたい場合は、ピッチを変えるだけでなく、調律の時に調整、整音や整調をしてもらう方が、効果があります。

ですので、ピアノ調律師さんと相談して、決めると良いでしょう。


大きなピッチの変更にはご注意を

もし、ピッチを変える場合、調律師さんと相談してから、変更することになると思います。ピアノのピッチを大きく変える場合は、次の点にご注意ください。

  1. ピッチを変えると、ピッチを変えない時よりも、音が安定しにくい
  2. ピッチを上げた分だけ、ピアノの弦に負担がかかる
  3. 大きく変えた場合は、音が安定するまで時間がかかり、1回の調律では終わらないことも
  4. ピッチの変更状況によっては、別途費用が必要になることがある

このように、ピッチを大きく変える場合は、色々と問題がでてきますので、調律師さんとよく相談した上で、変更してください。


まとめ|ピッチについての知識や注意点

最後にピッチに関する、まめ知識や注意点を書いて、終わりにします。

  1. ピアノ調律でのピッチは、基準となる鍵盤中央の「ラ」の音の周波数
  2. ピアノではピッチを440Hzか442Hzのどちらかにするのが一般的
  3. 440Hzは国際会議で決定されたピッチ
  4. 442Hzはコンサートホールなどで用いられるピッチ
  5. ピッチを上げた分だけ、ピアノの弦に負担がかかる
  6. ピッチを変えると、ピッチを変えない時よりも、音が安定しにくい
  7. ピッチの変更が大きいと、別途費用が必要になることがある
  8. 古いピアノや、長期間調律をされていないピアノは、断線を避けるため低めに調律することも
  9. ピッチは気候変動で2Hzくらいはすぐに変わる
  10. 音色を変えたいのなら、ピッチ変更より整音や整調の方が効果的


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