『ピアノ調律.net』 調律師体験インタビュー

~ 顧客減少傾向だからこそ、新規窓口の1つとして活用したい。  佐々木ピアノ調律所  ~


佐々木ピアノ調律所』の佐々木さん、
『ピアノ調律.net』の体験を語ってくれました。

 

 


佐々木さんは、平成9年に独立され、現在、千葉県を中心に活動をされています。ふだんから精力的な活動を展開する佐々木さんが、今抱えている問題とはいったい何か。どうして『ピアノ調律.net』に登録し、それをどう活用しようとしているのか。それらについて、本音で語っていただきました。


インターネットにも詳しい佐々木さんが、様々な集客上の悩みや解決のヒントもおしえてくれます。


それでは、以下ご覧ください。



インタビュアー: 『ピアノ調律.net』運営責任者 新井

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  • 仕事の悩みは、やっぱり定期調律


  • 新井: これは、調律師の方々に、まずはじめにお聞きしていることなんですけど、いま調律師として仕事をする中で、いちばん困っていることってなんでしょうか?



    佐々木: そうですねぇ、やっぱり定期的に調律の予定がとりづらくなっている事でしょうか。お客様にも色々と事由がありますからね。

    子供がピアノを辞めてしまった、娘が結婚して弾く人が居ない等々の理由で、定期的な調律の予約がとり辛いというのが今の悩みです。でも、どんな理由であれピアノがあるのであれば、一定期間で音律が低下しますので、最低でも2年に一回程度の調律をお勧めしたいというのがこちらの本音です。



    新井: なるほど。私も多くの調律師さんとお話させていただく中で、この点については、みなさんほとんど共通して抱える深刻な悩みだとわかりました。

    こういう問題の背景には、幅広くあるとおもいます。ユーザー側のピアノメンテナンス知識の欠如。母親世代から子供へピアノが引き継がれないという文化・教育問題や、ピアノ販売業界の体質、経済的に豊かな国になるとピアノ離れを起こすといった経済上の問題などなど。

    私としても、こういった状況が少しでも良い方向に向かうよう、たとえばメールマガジン等で情報発信を心がけたいとおもっています。そのことで、調律師とユーザーに、できるかぎりミスマッチが起こらないようになればいいなと。

    そのためには、調律師の方にもできるかぎり情報公開していただくなどご協力が必要ですし、一方で、ユーザーにも、身につけるべきピアノ管理の知識や、調律を頼むときのマナーなどについて理解を促していきたいとおもっているんです。




    佐々木: まず、「弾いていないから音は狂わない」、と思っているユーザーさんが多いんですね。

    弦は約90Kgの張力で張られているので、調律直後からピアノのピンの特性によりますが、” 自然と、じわじわと”、緩んできます。全く鍵盤に触らなくても、”音律”は低下するんです。

    もう一つは、やはり弾く事により”音の清濁”(1つの音には3本の弦が張られています/低音部は1.2本張り)が汚くなります。専門用語ですと”ユニゾンが狂う”といった自然現象です。

    これらは、ごく基本的な知識なんですが、知らないユーザーさんが多い。だから、それらをもっと理解してもらう必要があるし、そういう努力を調律師のほうからもしていかないとダメですね。


    それから、調律を頼むときのマナーについても、調律師側とユーザー側でそれらを共有できれば、もっとお互いにメリットがあるとおもいます。

    最近は、お忙しいユーザーさんが多く、時間に追われている感じがします。でも、こちらとしては”時間”が、十分に欲しいんです。ご多忙中に、お宅に上げて頂いているのですが、やはり時間に急かされると、こちらもいい仕事ができません。「ここも診てあげたいけど・・・無理かなぁ・・・」と思って作業するのは、僕も心苦しいです。

    特に、久しぶりに調律を頼むお客様には、最低2時間、作業の時間として頂けると嬉しいんですけれども・・・


    新井: そういった共通認識をもつことは、お互いにとってほんとうに大切ですよね。

    ユーザーさんのピアノに対する価値観も、最近では様々になってきています。だからこそ、必要なんでしょうね。

    そうでないと、前提がおかしいところでもって、ユーザーのほうが調律師に無理難題をおしつけていく・・・みたいな。(苦笑)

    ある調律師さんいわく、 「そんなこといわれても、このピアノの性能では不可能じゃ!」と、キレそうになったこともあるとかないとか。(笑)


    それに、きちんとした知識がないと、結局、損をするのはユーザー自身だとおもいますよ、ほんとに。見た目だけキレイな海外廉価ピアノを買ってうれしいんだろうけど、知らぬが仏というか・・・

    でも、そういったユーザー側の非にたいして、調律師のほうから一方的に責め立ててばかりいても実りは少ないとおもいます。率直にいって、相互理解の努力が業界をはじめ調律師側のほうでこれまであまりなされてこなかったとおもうし、調律師個人の情報発信力にも限界があるとおもいます。

    より多くのユーザーに、よりわかりやすくピアノや調律の知識をきちんと伝えていく。そして、共通認識を醸成していく。そういう役割を、『ピアノ調律.net』が担えればとおもっています。

    私は、相対音感しかもっていませんが、そうであるから、全体的に音が下がる感じに対して、それほど違和感がありません。だから、もし、1年後にそれほど音が狂っていなければ、気になりません。そのとき、調律をしてもらうかわりに、ピアノの寿命を延ばすため、同じ料金でなにか調整してもらえませんか?といった提案をしてみるのも、1つだとおもっています。

    こう言えるためには、ユーザー自身がピアノに愛着を感じていて、ピアノの知識もある程度もち、自分のピアノをどうしたいんだという方向づけの感覚ももっている必要があります。

    これらがユーザー側に身についてくると、ユーザーにとってメリットのある提案が自らできるし、調律師にとっても、単なる音あわせに終わらない継続的な仕事につながっていくとおもうんですよ。


    『ピアノ調律.net』では、そういう両者にとって意味ある方向づけをしたいんです。




    佐々木: ほんとに、そうですね。そうなっていくのが理想です。


     



  • インターネット経由のお客さんに見られる現象
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    新井: ところで、佐々木さんご自身は、ホームページをもっていらっしゃいますが、ふだんどのように活用されてますか?


    佐々木: HPの目的はお客さんの新規獲得と、既存のお客さんの情報サービス配信です。

    具体的には、新規のお客さんに対しては、自分が仕事で回れる範囲の説明、出張費の説明、料金の説明、修理があった際の修理金額の一覧等で、これから調律を頼むお客さんが、どの程度予算がかかるかを事前に把握できるようにしてあります。

    既存のお客さんに対しては外部リンクですが”月間予定表”(いわゆるスケジュール表)を 公開してあります。事前に、予約のある日、場所、時間が一覧で分かりますので、お客さんの空き時間と私の空き時間を事前に確認できます。(お客様の名前は公表してありません。)予約をする際にとてもスムーズに決定できます。お客さんにもとても好評です。これは、旅行日程の予約システムを参考にしました。




    新井: 「月間予定表」公開とは、いいアイデアですね。インターネットのホームページを見て依頼をするお客さんは、今、どんどん増えています。そういった方々の利便性を常に考えることは、とても重要だと私もおもいます。




    新井: では、インターネットを使った集客活動をする中で、リアルの活動やお客様とはなにか違うと感じる点はありますか?




    佐々木: 特にありませんし、僕自身も特別意識していません。インターネットは、いままでの電話帳と同じように、単に情報発信ツールの1つとして理解しています。

    違うといえば、メールで対応をしたがるユーザーさんが多いことでしょうか。メールで連絡できるのは確かに便利ですが、伝わらない事も多いんです。

    確かに、日時等の打ち合わせでメールは確実ですし、便利だと思います。
    何か気になる点などをお客様からメールの段階で報告があれば、その場で返答できます。でも、メールだと、お客様がピアノの状態をどのように把握しているかが見えにくい・・・ですね。

    お客さんにとっても、言いにくい(説明が難しい)のではないでしょうか・・・。ですので、電話ができる環境であれば、必ず事前に直接電話でお話します。そうすることで、すれ違いを少なくするようにしています。


    また最初の話にもどりますが、まあ、この電話の段階になれば、インターネットもリアルも違いはないんですよ。




    新井: 『ピアノ調律.net』でも、お客様には、「メール」か「電話」のどちらで連絡希望かをおたずねしています。そういう意味では、できるだけ「電話」を選択してもらうよう、促したほうがよさそうですね。


     

     



  • ピアノ調律.netを使ってみて
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    新井: はじめて「ピアノ調律.net」を知ったとき、どうおもいましたか?印象をきかせてください。




    佐々木: 「おー、これはいいなぁ」と。

    仕事が来る、来ないは別として、とりあえず、クライアントの一つとして登録しておこうというのが最初の気持ちです。

    僕は、もともとインターネットを得意としていたんですが、ネット活動はどうしても1人でモクモクと作業をすることが多くなってしまう。それから、調律師同士の情報交換も、意外と少ないんです。

    だから、頼もしいパートナーが現れてくれたなぁという思いです。

    こういうサイトとなら、タッグを組むことで、僕のインターネットでの活動をさらに飛躍させてくれるんじゃないかという期待感が、ものすごくありましたね。


    実際にサイト運営者の新井さんとお話しして、とても理解があって協力的な方だとおもったし、システムも信頼できるものだとおもいました。それから、調律師やユーザー全体の動きについてなど、情報交換できることも大きいです。

    このシステムが提供するサービスは、お客さんにとっても、満足度が高いのではないかと思います。


    新井: なんだか、照れますね。(笑)
    でも、調律師の方の良きパートナーであるというのは、まったくそのとおりです。

    「ピアノ調律.net」が登録調律師に代わってやるべき仕事は、ユーザーの啓発にはじまり、質の高いアクセスを大量に送り込むことなどがあります。

    サイトへのアクセスというと、まず大手検索エンジンからのアクセスを思い浮かべるのが一般的でしょう。だから、検索結果の順位に、みなさん一喜一憂するわけですね。

    「ピアノ調律.net」としても、当然そこは考えていくわけですが、じつはネットのアクセスの源流はそこだけではありません。むしろそれ以外のほうが、大きかったりします。インターネットの世界は、奥の奥まで知り尽くしていますので、その方面のパートナーとしてお手伝いできることはいくらでもあります。


    それから、常に楽しく創造的な企画を行い、サイトの活性化を忘れないようにしたいともおもっています。




    新井: では、「ピアノ調律.net」をとおして、はじめて調律の依頼が入ったときの気持ちをきかせてください。




    佐々木: まず「えっ!もう? 早いなぁ。」と驚きました。

    なにしろ登録して3日後の依頼でしたからねぇ。失礼ながら、こんなに早いとは、正直おもってなかったので。(笑)

    でも、素直に嬉しかったです。お客さん、ご指名ありがとうと思いました。


    それから次は、どんな人なのかが気になりました。また、場所も気になりましたね。できるだけ近いほうが地理もやさしいし、時間的にもうれしいし。そのへんは自分の都合を考えちゃいましたけど。(笑)




    新井: じゃあ、実際にそのお客様のお宅に伺って、お話やお仕事をされたときはどうだったんでしょう?なにかいままでと違ったことってあります?




    佐々木: 伺うにあたって、お客さんから地図データを詳細に教えて頂いたので迷わずに伺えました。 これは、インターネットならではだとおもいます。情報共有できるのは、とても有難かったです。違いといえばそういうことでしょうか。

    仕事自体はいつもと全く同じスタンスでできました。前回の調律等の情報も事前に分かっていたので、それもこちらとしては安心でした。

    インターネットをつかうといっても、仕事の基本はまったく同じだとおもいます。お客さんとのコミュニケーションを大切にし、満足していただく仕事をする。ふだんからそういうスタンスで仕事をしているのであれば、インターネットといっても恐れることはありません。そういう方なら、ツールとしてのネットを最大限活用できるはずです。

    ただ、おもしろいのは、お客さんが自分に対してもつイメージを予め豊かに広げてくれることでしょうか。

    僕は、「ピアノ調律.net」のプロフィールページに、自分の写真をのせたり、自分がピアノ調律師になるきっかけなどできるだけ多くのことを書いています。だから、それを見たお客さんが、お会いする前に、調律師としての僕のイメージを豊かに想像してくれます。それで、そのイメージと実際の僕はどうだった?みたいな会話がおもしろい。(笑)

    幸い、僕のプロフィールから、安心できそうとか真摯な印象をもっていただいたみたいで、ほっとしました。その逆だと、たいへんなことですから。(笑)

    お客さんのほうも、前もって抱くイメージと現実はどうなのか、そのすり合わせを期待し、楽しんでいるところもあるなと。そういう意味では、こういったお客さんとの出会い方は、いままでにはなかった新しい価値を生んでいるとおもうんですよ。



    新井: なるほど、それはおもしろい。(笑)




    新井: じゃあ、「ピアノ調律.net」をつかってみて、いちばんよかったとおもう点はなにかありますか?


    佐々木: 情報発信とその質の重要さに、改めて気づかされたことです。

    ユーザー代表でもある新井さんと話をしながら、プロフィールページや料金体系について検討をくわえていく中で、それを痛感しました。

    もちろん、これまで僕自身も、常にユーザーの気持ちをくみとって、その情報を活かそうと考えてきたんです。

    でも、お客さんって、常に本音で語ってくれるわけではないし、批判したくてもその場でいえないことってありますよね。それに、調律師同士がそういった顧客全体に関して情報共有しているわけでもありませんから。

    つまり、自分だけの情報収集には、限界があったということかもしれません。

    だから、スーパーカスタマーでもある新井さんに、顧客全体の構成や、若い世代の考え方、ネットの顧客視点、顧客がもっとも重要視している点など、情報発信のための客観的材料をもらえたのはうれしかった。

    遠慮なくズバズバ批判を加えてくれた新井さんには、感謝してるというか、ほんとぜんぜん恨んではいませんよ。(笑)

    たとえば、プロフィールには、調律師になるきっかけというのを書いています。これが、お客さんにとってどういう意味をもっているのかを知った上で書くのと、意識せずになんとなく書くのでは、表現や伝わり方がぜんぜん違ってくる。


    それを理解して情報配発信するか否かでは、まったく情報の質が変わってくることがわかりました。情報は、単純に多ければよいというわけでもないんですね。

    こうした顧客視点でものごとを考えていくことで、お客さんが事前に知りたいこともだんだんわかってきて、なんとういか情報感度が以前よりもずいぶん上がった感じがします。




    新井: やっぱりちょっと怒ってたかぁ・・・(苦笑)

    どんな社長であれ、自営業者であれ、自分のことを客観的に見てくれる存在って必ず必要だとおもうんです。

    作家には必ず編集者がいるように、調律師にはその仕事について客観的にアドバイスをしてくれる存在がいてもいいんじゃないか。

    私自身、調律師のみなさんにそういう期待を抱いてもらえる存在になれるよう意識していますし、さらに視野を広げ努力していくつもりです。



     


  • 『ピアノ調律.net』は、新規の窓口の1つ



  • 新井: さて今後、「ピアノ調律.net」を、どのように活用していきたいとおもいますか?


    佐々木: まず、新規の窓口の1つとして期待していますし、そのために利用したいとおもっています。新規のお客様を沢山ご紹介頂けるように、こちらとしても、できる事はご協力していきたいと思っています。

    また、「ピアノ調律.net」では、さきほどもお話にあったように、メールマガジン等の情報配信によるユーザーへの啓発にも力を入れていくようです。そこへ記事を提供するという形でも、ご協力したいとおもっています。

    因果応報というか、ユーザーにとってよい情報を自ら発信することで、いつかは自分自身にかえってくるとおもっています。待っていておこぼれをもらおうという「棚からぼたもち」的発想では、これからの時代、厳しいとおもいますし、発想がそもそも貧弱ですよね。貧弱な発想には、貧相な人しか集まってこないとおもいます。ふつうに考えて、そういうところに、多くの優良なユーザーは集まってこないだろうなと。

    それに、こうした情報発信活動を継続していくことが、結局は自分自身のブランドづくりになるとおもっています。

    みなさんそうだとおもいますが、下請け的作業なんていうのは、他者依存で不安定ですし、状況は年々厳しくなってきていますよね。その状況をなんとかするためにも、自分のことを慕ってくれるファンの創造が、これからの大切な課題になってくるとおもっています。

    このサイトが、調律師を探すポータルサイトのような存在になって欲しいですね。あと、調律師同士の情報交換の場になってほしいとも思います。




    新井: 「棚からぼたもち」的発想が、これからは通用しない。ほんとうにそのとおりです。せめて、「棚の下までは動いて、もらいにいく」くらいの行動は、必要でしょうね。危機感をもっているのに、あまりにも行動を躊躇する方が多いとおもいます。




    新井: 最後になりますが、これから『ピアノ調律.net』の登録を検討している調律師の方々に、一言お願いします。




    佐々木: お取引先の一つとして、まずは登録をしてみる価値はあるとおもいます。新規顧客の開拓を真剣にお考えでしたら、前向きに検討していいとおもいます。実際に私も、サイト登録後3週間ほどで2件の依頼という結果がでているので、これは利用価値が高いとおもっています。

    このサイトは、いままでの電話帳広告などとはぜんぜん違って、有利な点がいくつもあります。たとえば、自分の活動地域を現住所に限定する必要もありません。

    僕であれば、千葉県が現住所ですが、東京や茨城でも出張可能地域として登録しているので、露出の機会が増えます。

    それから、「ピアノ」や「ピアノ調律」というキーワードをきっかけに、検索エンジンやリンクなどをたどって、膨大な数の人たちがアクセスしてくる可能性を秘めています。

    中には、不特定多数の人に見られるのを嫌う方もいるかもしれません。でも、自分のことに興味をもってくれる潜在的なお客さんが、意外なところで見ているかもしれません。それに、誰かに見られているかもしれないという緊張感をもって毎日仕事をすることで、モチベーションも必然的に高まります。

    こういうサイトを、他の調律師のみなさんといっしょに盛り上げていければいいとおもっています。そういった個々人のがんばりからかもし出される一体感のようなものが、今元気のない業界を活性化するために、とても大切なことだとおもうんです。




    新井: わたしも、佐々木さんのようにパワフルな方がたくさん集まれば、きっと業界全体を元気にしていく何かが生まれてくるような気がします。
    佐々木さん、今日はいろいろお話、ありがとうございました。