ピアノの鍵盤が上がらない。それはひょっとすると

高木ピアノサービス

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(兵庫県西宮市)
 高木さん

先日、お客様から突然のお電話。電話の内容は

奥様:「鍵盤が上がってこないんです」

このお客様、数年前にヤマハのアップライトピアノU3をお求め頂きました。

ピアノを使用しているのは、高校生のお嬢様ですが、奥様も、「また、ピアノを始めてみたい」願望があり、いつも、ピアノや音楽の話で盛り上がります。

奥様:「乾燥剤も入れているし、除湿器は掛けているし、湿度制御の器械も取り付けているし、どうしたらいいでしょう?」

と困惑気味。そこで、電話口で、色々と質問することにしました。

高木:「鍵盤の間に、何か、挟まっていませんか?」

高木:「ん~、例えば、10円玉とか、1円玉とか」

奥様:「お金は落ちていませんし、挟まってもいません」

高木:「それじゃ、ピアノを弾きながら、おせんべいを食べていて、その、食べかすが入ったとか?」

奥様:「そんな、お菓子なんてことは、ありません」

高木:「そうですか……」

高木:「分かりました、それじゃあ、取り敢えず、お伺いすることにします」

訪問日を決めて、電話を切りました。

さてさて。いざお伺いして、ピアノのパネルを外し、鍵盤蓋を取り除くと……。

高木:「あら~!」

真ん中のペダルに使用されているマフラーフェルトが、無惨にも食いちぎられ、鍵盤の上には、その残骸が、てんこ盛りの状態。

さらに、鍵盤はかじられているし、柔らかそうなものはみんな巣作りの材料になっているようだ。

高木:「奥さん、これはネズミの仕業ですよ」と、説明すると

奥様:「キャッ」

どうやらネズミが怖いようです。

高木:「ボクも気持ち悪いですよ」

とは言ったものの、後処理もピアノ調律師の仕事です。

高木:「奥さん、取り敢えず、掃除機を貸してください。それと、ゴミ袋も一緒にお願いします」

早速、鍵盤を、端から少しずつ取り外しては、掃除機を掛けることにする。

いつでもネズミが飛び出してきてもいいように、掃除機は回しっぱなしにしてある。

以前、鍵盤の下に巣を作り、ネズミの赤ちゃんが、4~5匹いたこともあり、「出てきたら、掃除機で吸い込んでやる」と、ブツブツとぼやきながら、恐る恐る作業をする。

今も、ネズミがいるのか? 赤ちゃんを産んでいるのか?

ドキドキしていると、突然、ネズミの顔が見えた! 一瞬、ドキッとして

高木:「うわっ!いた!いました!ネズミがいました」

奥様:「ギャ~!」「何とかしてぇ~」

そこから、悪戦苦闘の始まりです。しかし、ネズミの方も命がけです。それどうだとばかりに、掃除機の吸い込み口をネズミに向ける。ネズミは、姿を隠す。

高木:「どこだ、出てこい!」

すると、ネズミは、ペダルの突き上げ棒を伝って下におり、瞬時にピアノから飛び出して逃げた。

こちらも負けじと追いかけ、壁際に追いつめる。ネズミは、壁際をウロウロしている。

ジワジワと追いつめていく。しかし、2~3度壁際を往復し、結局、押入に逃げ込まれました。

高木:「奥さん、ダメでした。逃げられました、すばしっこいですね~」

奥様:「そうですか~・・・。」

その日は、進入経路のペダル穴を新聞紙で塞いで帰り、後日、ネズミ除けの器具を取り付けて対処しました。

奥様:「あの日以来、押入は空けていません」とのことです。

ネズミはもう逃げ切って、いないのでしょうが……。まぁ、ほんと、お騒がせなネズミさんでした。

ピアノ調律師高木のワンポイントアドバイス

このお宅は、兵庫県三田市の山沿いで、昔からある民家です。多分、この環境ゆえに、ネズミが入ったものと思われます。

町中の住宅では、ネズミの進入経路がないので、ネズミの被害はほとんどありません。

まれに、ウサギやハムスターを飼われている家には、その餌をねらって、紛れ込んでくることもあるようです。

ネズミ除けピアノのパーツですが、業者または調律師に言えば手に入ります。ペダルが2本用のもと3本用のものがあります。画像は2本用のものです。

金網のようになっていて、ペダルの内側(ピアノ本体内部)に取り付けます。

現在のピアノには、予め、ネズミ除けが取り付けられています。しかし、もし古いピアノをおもちであれば、こういったネズミ除け器具を取り付けておけば安心ですよ。

【 今回の記事の執筆者 】
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