【ピアノと調律】のメルマガ・バックナンバー 07年12月24日

◆ ピアノ調律のとき、冷房や暖房をつけるのはよいの?それとも悪いの?


今日のメルマガ執筆者
ピアノフォルテ (宮瀬) (愛知県名古屋市)



こんにちは、宮瀬です。

ピアノ調律にうかがったとき、
冬の寒い日であれば、暖房をつけてくださるお客様がいらっしゃいます。

わたしのことを気遣ってくださって。
そんなときは、いつもとてもありがたいとおもいます。

でも、そのお心遣いが、ピアノ調律の作業にとっては必ずしもよいとは限らない・・・
きょうは、そんなケースについてお話したいとおもいます。



何年か前にお伺いしたお客様宅でのことです。
雪がシンシンと降る、それはそれは寒い日でした。

「こんにちは!調律にうかがいました。よろしくお願いします。」
と、寒さをふきとばすように元気なご挨拶をし、いざピアノのもとへ。

ピアノはお母様が以前使用され、現在は小学校1年生のお嬢さんがつかっているY社製のアップライト。
親から子へと、大切に受け継がれていると感じました。

二階に置かれていて、部屋は6畳ほどの洋間。
暖房はエアコンです。

お母様は、いつも夕刻まで仕事に出ており、この日も調律予定時間の15分程前に仕事から帰宅されたところでした。

「今帰宅して、暖房スイッチ入れたところです。寒いですけどすいません・・・」

と、お母様。

「かまいません」

と返事をして、早速調律をはじめました。


はじめに、音叉(基準の音を出す工具)でピアノの基準音(442Hz)をあわせ、
その基準音をもとに他の音を順次合わせていきます。
ちなみに、音叉そのもののピッチ(音の高さ)も、周りの温度で変わります。
ですから、冬は使用前に体温で暖めてから使用するんですよ。

大きな狂いもなく、順調に作業はすすんでいきました。
冷えきっていた部屋も次第にエアコンで温まり、快適な状況となりました。


ところが・・・





調律が半分ほど進んだところで、低音部と中音部で調律後の確認してみます。

一瞬、耳を疑いました。


しっかり合わせたはずなのに、あってないぃーーっ!


基準音を確認すると、
なんと!ピッチが442Hzから441Hzに下がってしまっているのです。



なぜか。


もうお気づきですね。
そうです、室温の変化です。

暖房によって弦の緊張度が緩んだだめ、ピッチ(音の高さ)が作業中に下がってしまったのです。


「どうしよう? もう半分くらいまで調律したのに・・・」




調律時にできる限りベストな状態にしなければ、その後は狂う一方です。
どんな状況にあっても、そのときにベストをつくすのが、ピアノ調律師としての責任とありかたではないのか。

そんなおもいが、頭をよぎりました。


このまま続けるわけにはいかない。


そう強くおもいました。


よく考えてみれば、今ならお嬢さんがいつも練習される室温に近いはず。

焦る気持ちを抑えつつ、
基準音を取り直し、一からやり直すことに。

時間はその分かかりましたが、最後まで無事行うことができました。
やり終えたあとは、とても爽快。やってよかったとおもいました。




ピアノは、とても繊細な楽器で、各部品が温度に影響を受けやすいのです。
ストーブのように移動可能な暖房器具の場合、足元が寒いからといって、
ピアノに近いところからピアノにむかって暖房される方がいます。

すると、暖房がよくあたる場所とあまりあたらない場所とで温度差が生じ、
温度の変化を受けたところとあまり受けないところとで、音の変化のしかたに違いがでます。
そうなると、全体としてきれいな響きになりません。(ただし、暖房を切れば元にもどります)

そんなことですから、今お話してきたようなケースは困難を極めることになります。
環境によってピアノの状態が刻々と変化する中で調律するのは、
まるで動いている的に矢を射るようなものなんです。



音が変化する原因には、いろいろあります。
打鍵(ピアノを弾く力)の強さ、弦を巻きとめているピンのかたさ、ピアノの新しさ、
ピアノへの振動(運搬等)の有無、湿度、ピアノの設計・材質。

それから、もちろん、人間の感じ方によるところもあります。

しかし、いちばん大きく影響するのが、この「温度」なのです。
音に敏感な方やそのようなお子さんをおもちの方は、よく覚えておいてくださいね。




では、夏や冬など冷暖房器具を使い、外の環境とピアノを弾く室内の温度差が激しい時期に、
より良い調律を受けるにはどうすればよいのか。


それは、調律の際、いつも演奏する時と同じような室温を保つこと。
そして、ピアノがその室温になじんだころに調律作業を行うことです。



これが、理想です。


調律師が到着する前、少なくとも2時間前にはそういった状態をつくっていただくのがよいのです。

冬場であれば、エアコンは、温風がピアノに直接かからないよう風向を調節します。
石油ファンヒーターやガスストーブなら、ピアノからは少し離れたところで使用しましょう。

夏場は、エアコンが主流となりますが、
冬場同様、冷風がピアノに直接かからないよう、注意してください。

ただし、小さな電気カーペットや扇風機、赤外線ヒーターなどは、
部屋全体への影響力が少ないため、ピアノへの影響もほとんどありません。




たとえば、ピアノが置いてある部屋がいつもすごく寒いのなら、
その室温のままで調律をするのがよい、となります。

たとえ、調律師の顔が青白くなって凍え死にそうになっていても、です。 (キッパリ!)
気遣いは、無用ですよ。


え、わたしですか?

えぇ、もちろん耐えてみせますとも!


あぁ、あのぅ・・・

ただ、せめて足元に小さな赤外線ヒーターだけでもあれば。。。

それがかなわぬなら、ネコちゃん好きのわたしです、
ネコちゃんを足元の暖房代わりにお貸しください。

それだけで、心も体もホッカホカ!




ピアノフォルテ (宮瀬) (愛知県名古屋市)

宮瀬








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