思い込みは危険!ピアノを置く場所、環境は、昔と今で何が変わった?
ピアノの置き場所や環境は、今と昔でどう変わったのでしょうか? 置き場所や環境の変化による注意点も含め、ピアノ調律師さんに話を聞いてみました。
思い込みは危険!ピアノを置く場所、環境は、昔と今で何が変わった?
以下、ピアノ調律師さんのご意見です。
以前より、乾燥してきている
ピアノの森・調律工房
(埼玉県さいたま市浦和区)
森さん
特に冬場ですが、以前より感想した部屋が増えてきていると思います。
いわゆる石油ストーブと呼ばれるものが減ってきて、エアコンで暖房するお宅が増えています。
それから、床暖房も増えていますね。そこで注意なのですが、冬場の乾燥じている時期に、エアコン、床暖をしている時は、加湿器も同時に行うと良いと思います。
目安は、湿度50%前後です。
まめたろうピアノ調律
(北海道岩見沢市)
石川さん
新しい家だと、乾燥しすぎる傾向があると感じています。
私が伺う地域は北海道ですが、暖房設備がとてもりっぱで、固定されているものが多いです。
乾燥しすぎると、中音が上がる傾向があります。私の自宅もそうで、床暖房設備も入っていますが、最悪です。知らないうちに、音が上がってしまいます。
北海道の場合ですが、ふだんから湿度が低めなので、暖房によりよけいに乾燥傾向にあります。
また、北海道の場合は、外気温度が低く、中の暖房との温度差が大きいため、結露しやすいです。
北海道の場合、新築の家だとエアコンは一般的ではありません。灯油をつかったファンヒーター、或いはオイルヒーターが一般的です。
これらは、エアコンと比べると、乾燥しづらいです。
以前と比べて、よく響くようになっている
ピアノの森・調律工房
(埼玉県さいたま市浦和区)
森さん
以前と比べて、畳の部屋がとても少なくなっています。
代わりにフローリングが増えています。そのせいで、以前と比べてよく響くようになっていると思います。
谷口ピアノ調律事務所
(愛知県豊田市)
谷口さん
最近、お客様に調律を依頼されるのと同時に、こちらからいろいろその他問題についてお聞きしますと、ピアノがうるさい、耳をふさぎたい、何とかなりませんか? といった方が、多くいらっしゃいます。
原因の一つに、住宅環境の変化があると思われます。最近の住宅でよく聞かれるセールストークには、次のようなものがあります。
断熱性が優れている、窓も二重窓、だから防音効果も優れていて外に音が漏れない、といったようなものです。
それによって、音が部屋にとどまるようになります。それから、壁はビニール壁紙になり、音の反射が冷たく鋭くなっています。
こういった住環境の変化が重なることで、以前よりも音が大きく響くようになっています。
結果として、最近のピアノは金属的な音がして耐えられない、といった悩みを抱えてしまうユーザーの方が増えてきているのだろうと察します。
もうこうなると、調律以前の話になります。
私は、こういった音の問題を解決するために、音色の調性(整音)から行うことをご提案し、実践しています。
住宅メーカーは、特に音に対する人間の居心地の良さという観点で、あまり深く考えていないように私には思えます。
例えば、ウレタンの床材も、自然な音の反射はではないと感じます。
昔から使われている素材、建築要素、例えば、土壁、しっくい、無垢の床、高い天井は、結局のところ、音の環境も含めて、日本人がトータルで心地よく暮らすにはふさわしく、閉塞感もなく、落ち着く環境なのではないでしょうか。
最近の住環境での音の響きに対して、ピアノユーザーさんの抱える悩みを聞くにつけ、そう感じざるを得ません。こういった従来の家屋であれば、音の反射も、やわらかくなります。
ついでに言えば、これは住環境の変化の話だけではありません。
ピアノの機構、アクションのフレームは、昔は木でした。今は、アルミニウムです。
塗装も、大昔はニスです。でも、今はプラスチックのような膜になりました。
これも、音を固くしてしまいます。私個人は、昔の機構のピアノの音のほうが明らかに良いと感じます。
住宅環境もピアノの機構面でも、一見不合理に思えても、人間が生き物である以上、自然な材質のほうが、音が良い場合もあるということです。
建築基準(耐震基準)の変化
まめたろうピアノ調律
(北海道岩見沢市)
石川さん
以前、引っ越しに伴うピアノの移動で、引越し先の家の床を補強したほうがいいかどうかについて、お客様から尋ねられたことあります。
アップライトピアノの重さは、およそ200~250キログラムあります。
昔の耐震基準(1981年以前)の場合、床の補強をしないとちょっと危ないかなと私は考えています。
今の耐震基準(1982年以降)だと、その程度ならだいじょうぶだという認識です。
建築物の新耐震基準が施行されたのは1981年です。いずれにしても、床への影響が気になる方は、一度、専門の業者に相談されたほうがよいと思います。
ちなみに、床対策としては、コンパネなどの敷板をピアノの足の部分に敷いて、重さを分散させる方法があります。
或いは、アップライトピアノであれば、大きめのインシュレーターの上に置く方法もあります。
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