Q&A: ピアノ購入から3年後、調律以外にしておいたほうがよいメンテナンスは? 

調律師さん方の視点から、この点についてどう思うのか聞いてみました。

 




Q
: Q&A: ピアノ購入から3年後、調律以外にしておいたほうがよいメンテナンスは?


ピアノを購入後しばらくは、年に一回から数回の調律だけでも、ふつうは良い調子を保ってくれます。しかし、3年~5年経つうちに、いつの間にか、弾いていてちょっと違和感がでてくることがあります。そのタイミングで、しておいたほうがよいメンテナンスには、どのようなものが考えられるでしょうか?具体的にアドバイスをお聞かせください。

ピアノ調律.net 編集部



A:調律師さんの回答




簡単な内部掃除、鍵盤とそれを支えているバランスピンの拭き取り、研き 鍵盤を打鍵したとき 手前で支えるフロントピンの拭き取り、研きで かなり動きがスムーズになるでしょう。田崎pianomaintenanceより。




3 年後ということでもありませんが、内部の埃や弦の錆、汚れなどのメンテナンスは必須です。 アップライトピアノの場合、一度もピアノを動かして後ろを掃除されたことが無いようでしたら、埃やカビの温床となっていることでしょう。 ゴミや小物が落ちて、共鳴雑音もよく見かけます。 ピアノを前に出して、裏側の掃除をきちんとすることも長持ちへの第一歩です。

グランドピアノでも掃除の観点は同じで、鍵盤を全て外して内部清掃。 弦や、響板上の埃もきちんと掃除するのも必須作業です。




この頃はこれから安定期に入ってきますので、今一度 整調をしっかり行い、アクションの動きやピアノの材料の 乾燥具合をチェックして、ベストな状態にしたほうが良いと思われます。音色についても斑が出てきますので、ここで揃えたほうが良いでしょう。 この頃のピアノの癖がこの先ずっと影響してくるため、 しっかりメンテナンスすることを薦めます。

ピアノ調律アミュース 鈴木栄蔵





違和感にも色々な種類があるので答えにくいですが A.整調作業(タッチや中のからくり部分の動きなど) B.部品(フェルト、革)の摩耗による修理などのメンテナンスではないでしょうか。

Aは調律と同じで使用していくうちに寸法がミリ単位でずれてしまうので都度調整と提案があるかと思います。(数ミリのズレでも変化が出たりします)

Bは購入後何年か経つと出てくると思います。
(例1) ピアノの固い弦を叩くハンマーという部品にはフェルトが使われています。 ハンマーが弦を叩いていくと、だんだんフェルトに弦の溝がつきます。同じ所で何度も叩くのでその場所が固くなったり、あるいは溝が深くなっていきます。 深くなったり固くなると、弦と接触時に雑音を出すこともあります。 そうなった場合は、ハンマーを削って形を整え針を刺して音色を調整します。

(例2) ピアノのハンマーを動かすためのからくり部や鍵盤を固定するシーソーの支点部分には摩擦により錆や汚れが付着します。 そのまま使用していくと不必用な摩擦によりタッチが重くなったり、接触部分から雑音が出たりします。錆は接触しているフェルトの摩耗を早めてしまいます。そうなった場合は汚れ、錆を落として滑りを良くし摩擦を減らしてあげます。

AもBも、違和感を覚えた時にかかりつけの調律師に相談してからでよいと思います。 どうしても時間がかかる作業もあるので演奏者の練習に影響の少ないタイミング(発表会はまだまだ先の時)(受験でしばらくレッスンを減らしている時期など)がベストではないでしょうか。




「ピアノ購入から3年後、調律以外にしておいたほうがよいメンテナンスは?」

新品のピアノでしたら、3年経てば弦も落ち着いて調律も安定してくるころですが、他に音色やタッチの部分で色々な変化が出る頃だと思います。買った時の新品らしい張りのある音も、少し枯れた感じになってきたり、キンキンしてきたり、モコモコした感じになってきたり・・・・・。また、多く弾くピアノの場合は中の機械部分の調整がずれてきたり、機械部分のバネの力が緩んできたり、・・・・・。音色やタッチに変化が出始めるのです。ですから、しておいたほうがいいというよりも、調律以外の色々な調整をしなければならない状況になる頃だと思います。 私が一番気をつかうのは音色の部分ですね。

新品の頃というのは、多少音がキンキンしていたりモコモコしていても、音に張りがある分それらがカバーされてあまり気にならないかもしれませんが、3年たってその張りが少しなくなってくると、そのキンキンやモコモコやより強調されてきたりします。ですから、その時に音色の調整、つまり整音によって音をよりクリヤーにする必要があります。ただ、個人的には、それ以前からそのような兆候、つまりキンキンやモコモコがあった場合には、調律ごとに調整して改善しておくべきだと思います。調律師によっては、何年か経って音に変化が出てきた頃に整音はするべきだというかたもいますが、私としてはキンキンやモコモコの症状が現れた時には出来るだけ直すようにしています。でもこれは音色にかぎったことではなく、中の機械部分の調整にしても、ずれが大きくなってから直すのではなく、ずれはじめたら直すべきだと思います。いつでもストレスなく弾きたいですからね。

また、ピアノによっては新品でも鳴りの悪いピアノというのもけっこう多く、そのことを調律師や店のかたに相談すると、「何年か弾き込むことで鳴ってきますよ」と言われることもあると思います。それが大体2~3年といったところでしょうか。ただ、かなり弾き込まないと鳴ってこないケースもありますので、私はご要望があれば3年以内でも鳴るように調整することもあります。3年も待っていられませんからね。ただ、この場合、どちらかというとメーカー側は音色を変えるために新品のハンマーをいじることに抵抗がある場合が多く、そのことでメーカーの側とトラブルにもなりかねませんので、いじる場合はお客様の了解をとってからにするようにしています。おそらく、メーカーや多くの調律師が音を変えることのリスクの方を考えて、ハンマーをいじることに消極的になっていると思われますが、私にとっては車の運転と同じで、方法さえ間違えなければ、素晴らしい成果を得られるものだと思っております。 いずれにしても、私としては常に音楽を第一に考え、そのためにどうすればいいかを最優先に考えることにしています。

ピアノというのは生き物みないなもので、経年とともに音も変化してくるのが普通です。3年にかぎらず、そのときどきに合わせてベストな状態に調整することこそが調律師の仕事だと思います。

ピアノの森・調律工房
森 一夫






 


ピアノ調律.net 編集部


 




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