Q&A:ヤマハUX-1を調律後、音が小さくなったと感じたのは錯覚?

調律師さん方の視点から、この点についてどう思うのか聞いてみました。

 




Q
: Q&A: ヤマハUX-1を調律後、音が小さくなったと感じたのは錯覚?



以前、ヤマハUX-1を中古で購入し、先日数年ぶりにピアノ調律をしました。子供が弾く以外に、私自身もたまに音を鳴らして弾いていました。ただ、調律後は今までとは音が変わったと感じました。全体的に音が硬くなり、高音の音量が小さくなった気がします。音の基準は、記録をみると特に変えず440hzのままでした。変わったと感じるのは、わたしの耳の錯覚でしょうか?調律師の皆様、どうぞよろしくお願いします。



大人で男性からの質問



A:調律師さんの回答




行った調律の精度が甘いのが原因ではないでしょうか。




数年ぶりの調律ならば、かなり音律が狂っていたと思われます。ということは平均律の音律以外の音が沢山含まれているため、かなり賑やかな響きになります。特に高音は弦が短いため、中低音より音律の狂いが大きくなります。 この様な狂ったピアノを調律して、平均律のみの音律にすれば、当然、整った、締まった響きになり、硬く感じます。更に、高音域の方が、調律の前後ではその差が大きく 、より締まって、音量も小さく感じます。 余談ですが、この現象を嫌って、わざとユニゾンをぴったり合わせない調律もありますが、長持ちはしません。

ピアノ調律アミュース 鈴木栄蔵




ピアノの音は中に張ってある弦をフェルトのハンマーで叩くことによって出ています。 そして、低音弦は一本の巻線ですが、中高音は一つのキーに2本の巻線や3本のピアノ線が張られています。 時間がたって音が狂ってくると、この複数張られている弦がバラバラの高さの音を出すために余計な倍音や雑音を発生させ、汚い音になります。 しかし、その反面ピッタリ調律が合っているときに比べて多くの倍音が共振するために、聞こえ方によっては、「よく響く」であったり、「音が大きく聞こえる」と感じることがあります。この現象を逆手にとったのがアメリカの南部の酒場の雰囲気を醸し出す「ホンキートンクピアノ」です。 思いっきり調律を狂わせることによって、やかましく共振する音が逆にはっちゃけたおもしろい感じを奏でます。 一般家庭のピアノは数年ごとに調律していればそこまで大きく狂ううことはありませんが、狂いが大きければ大きいほど余計な倍音や雑音が多くなるので、前述のような現象が起こると考えられます。 この男性は、おそらくその現象を身をもって感じられたのではないでしょうか? ある意味とても音に敏感で良い耳を持っておられると思います。



中古での購入とのことで、詳細は不明ですが 通常調律すると三本ばらついた弦が一つの音になりますから音が小さくなるのは当然と言えば当然ですので 特に心配することはありません。錯覚です。 過去アメリカ南北戦争前後張力の低いピアノ調律でのバーのピアノば三本もしくは二本で一音弦の片方だけ基準音にして音に幅をもたせる ホンキートング調律もありましたからね、 興味あればディズニーランドに台車で運んで弾いてるピアノがそうです。ご参照あれ!( `・∀・´)ノ ヨロシクー
Music TAKANO




長年、調律していなかった為に音律の低下と共に、ユニゾンも乱れていたのです。 ユニゾンとは同音と言う事です。 ピアノの音は、ミュージックワイヤーを張っています。(ピアノ線) 均一した音量を得るために、1本張り・2本張り・3本張りとあります。 2本・3本張りになると、それぞれが下がってしまうので、乱れが生じます。 その乱れは、ワンワンと波打った音なんですが、とても響いて感じます。 綺麗に整えると、その乱れが無くなりスーッとまとまります。 そうすると、響きが少なく感じて音量が下がった様に感じるのです。




UX-1に限ったことではありませんが、ピアノ調律後に音量が小さくなったと感じられたのは、調律により音が整ったためだと思われます。 ピアノの弦は、最低音からの約1オクターブを除き、1音につき2本ないし3本の弦が同時になるような構造になっています。2本ないし3本の弦が同時になっていてもなぜ一つの音に聞こえるかというと、全く同じ高さの音に調律しているからです。時間とともに音が狂ってくるとズレが生じ、音の濁りとして聞こえます。数年調律していない場合音の濁りが発生し、特に高音は濁りが目立ちます。濁りは音の賑やかさにも影響しますので、調律により濁りがなくなれば、音量が小さく感じられることもありますが、整った透明感のある音になっているはずです。とはいえピアノによってはあまりにもぴったりに合わせてしまうと、音の伸びや広がりが抑えられてしまうこともあるため、意図的にずらして調律することもあります。このズレは音質に微妙な変化をもたらす程度のものです。調律師さんによって音が変わるのはそれによるところが大きいと思います。

前田調律事務所




「ヤマハUX-1を調律後、音が小さくなったと感じたのは錯覚?」

いえ、錯覚ではありません。
調律後の音は変わるか?色々なケースがあります。凄く変わった、変わったように感じる、あまり変わっていない、・・・・・。調律とは音を正しい高さに合わせることです。ですから、何年も調律していなかったり、設置環境によってかなり音が狂っていたピアノは、調律後にかなり変わったように感じます。この場合次の二つのケースが考えられます。

1:音がまとまって凄く良くなった。前が酷すぎた。
2:確かに音はまとまったが、前の方が良く響いていたように感じる。

音が小さくなったと感じるのは2のケースです。音が狂っていた方がよく響く?そう疑問を感じるかたもおられるでしょう。ではそれがどういうことかご説明しましょう。
ピアノの音は、3本の弦で一つの音を鳴らしています。で、この3本の弦がそれぞれ狂い出すと音が一つにまとまらずぼやけてきます。しかし、そのことによって色々な高さの音が出てきて賑やかな感じになるので、良く響くような感じになります。専門用語で言うと様々な倍音が出てきて響くように感じるということです。ファンキートーンと言ってジャズではわざとこのように狂わせて、その響きを楽しむということもあります。少しぼやけた柔らかい揺れるような響き、それはそれで魅力があるでしょう。調律師によっては、わざとユニゾンを狂わせて響きの効果を狙っているかたもおられるようです。また、調律したてより、少し弾き込んだ方が響きが良くなるというのもこのケースでしょう。過去には、「調律後より調律前の方が良く響いていた、前の方がいい」と言われてわざと音を狂わせたというケースもあったと聞いたことがあります。

確かに私も機械のようにキッチリ合わせるよりも多少の遊びがあった方が弾いていて面白いし、より音楽的になると思います。しかし、特にクラシックの場合は極端に狂った調律は許されませんし、そのようなプロの演奏も聴いたことはありません。
本来、調律とは響きを良くし、より楽しく音楽的に弾きやすくするためにするものであるはずです。でも、調律前の方がいい、このように言われたら調律師もガッカリするはずです。実際、教科書通り正しい音の高さに合わせることに主眼をおいている調律師はこのような結果になりやすいように感じます。しかし、きちんと正確に合わせたから響きが良くなるとは一概には言えません。響きを良くするには調律の他に音色調整の整音、タッチ調整の整調も同時に行わなければなりません。

ずばり申しましょう。
調律後に音が小さくなったと感じるピアノはとはどのようなピアノか?それは主に音がこもっていてモヤモヤした響きのピアノ、音が硬くてキンキンした響きのピアノにこのように感じることが多いです。こもっている音というのは、高い倍音が出ていないから音に輝きが出なくてモヤモヤした響きになるのです。また、キンキンした音は高い倍音が強すぎて低い倍音が目立たなくなり硬い響きになるのです。よってこのようなピアノは音をきちんと合わせると、かえって倍音が減って音が小さく感じたり、硬くなったり感じたりします。ですから、整音という音色調整でこの「こもり」や「キンキン」をとることが必要です。音をずらして多くの倍音を出すのではなく、1つの音から多くの倍音を引き出す、このように調整してこそ、音をきちんと合わせることで音が小さくなるどころか、よりクリヤーで輝きのある筋の通った魅力的で豊かな響きや音になるのです。
そして特にこの「こもり」というのは、音楽を表現する上で重りを引きずっているような状態で、そこから解放することによって表現力は翼を得たように飛躍します。それは調律をずらすことで解決するものではないのです。
(ただ「こもり」をとるために、ハンマーを硬くする硬化剤という薬品をハンマーに塗るのはダメです。確かに高い倍音は良く出るようになりますが、低い倍音が消されてしまうので、ピアノらしい柔らかい豊かな音が出なくなります)

ではその倍音を出すにはどのようなやり方をすればいいか、専門的になるのでここでは話しませんが、音を変えることにリスクを感じて消極的になっている調律師が多いのも事実です。でもこれを改善しなければ、いつまでたっても教科書通りの無難な調律で終わってしまいます。
そろそろ私も年齢的にも次に世代に私が経験で培ってきた音作りのノウハウを伝えていきたい、最近はそう思いますね。調律師のかたもこの記事を読んでいると思いますので、少しでもそのことに感心を持っていただければ幸いです。


ピアノの森・調律工房
森 一夫



 


ピアノ調律.net 編集部


 




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