Q&A: 鍵盤を弾いた後に戻るのが遅くて、トリルや速弾きができません。なぜ?

調律師さん方の視点から、この点についてどう思うのか聞いてみました。

 




Q
: Q&A: 鍵盤を弾いた後に戻るのが遅くて、トリルや速弾きができません。なぜ?



 鍵盤を弾いた後に戻るのが遅くて、トリルや速弾きができません。調律は、以前は定期的にやっておりましたが、最近はしばらくやっていません。調律をしていないと、このようになってしますのでしょうか。ちなみにカワイの古いアップライトピアノです。教えてください。よろしくお願いします。

ピアノユーザー様からの質問





A:調律師さんの回答






この様な現象の原因は複数ありますが、先ずは、バットフレンジのセンターピンとそれを通している穴(内側にブッシングクロス)との摩擦が適度でなく、硬めの場合、ハンマーヘッドの動きが鈍くなります。
次に考えられるのは、ジャックのセンターピンが硬めの場合、それからウイペンフレンジのセンターピンが硬めの場合などがあげられます。
また、鍵盤自体の動きが悪い場合も起こります。鍵盤の場合はバランスピンとピン穴、フロントピンとフロントブッシングクロスの摩擦が大きい場合です。
いずれも湿度が多い場所に長時間置くと起こります。
調律をしなくても適当な湿度の場所なら大丈夫です。
逆に湿度が少なすぎるとガタになり、打弦した際に音が
安定しなくなります。
古いピアノで長時間放置した場合、稀にセンターピンとブッシングクロスの間の油(汚れ)が固まって動きが悪くなる場合もあります。
どれもピアノのメーカーによるものではなく、湿度管理をしっかり行えば防げる現象です。

ピアノ調律アミュース





お答えします。グランド・ピアノかアップライトか提示がありませんでしたのですが、おそらく前者のアップライトと判断してお答えしますね。そもそも始まり、グランド・ピアノが作られた時代は貴族が跋扈した中世ヨーロッパで広い石作りの部屋で使用されてましたが、一般庶民でも弾けるようになり狭い部屋でも弾けるように、グランド・ピアノを立てた形で作製されました、
その為に、アクションのハンマーは地球の重力で上下運動していたのが、中途半端に前後運動になってしまいました‼️

更に、令和の日本の住宅環境の悪さにもよります、高温多湿にも関わらず、サッシ構造で湿度を逃がさない構造になっているために、
更に救いがたい湿気吸収楽器になっているのが現状です\(_ _)

連打出来ないのは、構造上の問題と湿気の問題がありますね、

グランド・ピアノにはキーを押し下げて少しあげるとアクションが次の音を出すための位置に戻すためのスプリングがついてまして、アップライトにはついていませんし、湿気の影響で動きたくても、動けないんですよ!

おそらくアップライトピアノの近くに台所やらバスルームが近いはずです、机やタンス、サイドボードやテレビ、冬場はファンヒーターの温風が吹き掛けるような環境が垣間見得ますね

基本構造が問題なのですから連打は諦めてください、

調律技術者に相談することをオススメします 
m(__)m

良心的な技術者なら的確なアドバイスをしてくれるはず、、、
です\(_ _)

 music takano





メーカーや年式などにより、トラブルの原因が違ってくるのですが、カワイの古いアップライトという事ですので、おそらく湿気により布で出来た部品が膨張し、可動部の動きが渋くなっているのだと思われます。
ピアノ調律師が定期的に整備を担当していれば、分解清掃や規準寸度に戻す作業が施されるので、このようなトラブルは未然に防がれている場合が多いです。

グランドピアノは水平に張られた弦の下から突き上げるようにハンマーを動かしますが、省スペース化を狙って作られたアップライトピアノでは、垂直に張った弦を手前から奥にハンマーが打たせるので、打弦機構(アクション)に大きな違いがあります。

鍵盤は天秤のような役割で、演奏者が下向きに押さえた力を上向きに変えます。
グランドピアノはその力をそのままハンマーに伝えられるだけでなく、打弦後のハンマーも重力によって元の位置に戻りやすい構造になっています。
対してアップライトピアノは力を90°曲げなければなりません。打弦後のハンマーも重力にあまり頼れないのでスプリングや紐を使って後ろにひっぱり戻してやらなければいけません。
このあたりのロスがそのまま両者の性能差となり、グランドピアノは1秒間で15~6回ほどの連打(高橋名人?)が可能であるのに対し、アップライトピアノでは1秒間で5~6回ほど連打するのが限界となっています。
さらに湿気や錆、埃が挟まったりすると性能はさらに低下し、鍵盤が下がったまま戻ってこなくなります。

可動部の動きを根本原因から改善するためには長時間の整備作業が必要となり、その場合ピアノの中にあるアクション部分か鍵盤等を持ち帰っての修理になりますの。その間ピアノは弾けなくなります。お伺い地域やスケジュールにもよりますが、だいたい4~5日見ていただければ、修理を終えたアクションを戻して調整まで可能です。





原因はいくつも考えられます。一番多いのは鍵盤フロントブッシングクロスとフロントピンの隙間が湿気等でブッシングクロスが膨張し隙間がほぼ無くなり引っかかってくる事。これはバランスピンとバランスブッシングクロスとの間でも同じことが起こりえます。それとバランスピンとバランスボールの間でも湿気等で鍵盤の木そのものが膨張したり、バランスボールに埃が過度に入ったりすることで、擦れ具合が固くなりすぎて引っかかりが出来る事があります。
次にアクションのセンターピンとブッシングクロスの隙間が湿気等で膨張しすぎてトルクが重くなりすぎると早い動きについてこなくなります。
センターピンは一つの鍵盤アクションについてハンマーフレンジ、ウィッペンフレンジ、ジャックフレンジ、レペティションレバーフレンジの合計4か所あり、そのどれか一つでも固く(重く)なりすぎると早いパッセージについて来なくなります。主に湿度が原因ですがブッシングクロスそのものの品質に問題がある場合と、ピアノそのものが経年過多でブッシングクロスのしなやかさが無くなり、かさついてくると引っかかり易くなり早いパッセージ等に繋がって来る事も有ります。



アクションや鍵盤の動きが悪くなっていることが原因として考えられます。これをスティックと言います。
鍵盤を押すと、多くの部品が同時に動き、ハンマーが弦を叩きますが、部品の動きが悪い場合、鍵盤から手を離しても部品が所定の位置に戻って来ません。そうすると次の音を発音させることができません。
調整方法としては、部品に潤滑剤を塗布したり、フェルトの厚みを調整したり、回転軸を交換したりします。
湿気が多い環境や、しばらく弾いていないピアノの場合は、動きが悪くなることが多いです。そのような場合は定期的な調律の時に調整をして良い状態を保つ必要があります。


前田調律事務所





弾いた時の反応が悪い、もっと反応を良くしてほしい、そのようなご要望をよくいただきます。では調律をきちんとすることで反応は良くなるのでしょうか、トリルや速弾きがよりしやすくなるのでしょうか。厳密に言うと違います。調律とは基本的に音程を整える調整で、タッチ調整はまた別の調整になります。それはタッチを整える整調と、音色を整える整音です。ここでおやっと思う読者のかたも多いでしょう。弾いた時の反応を良くするのはタッチの問題なので整調が重要で、音色を整える整音は関係ないのではと。確かに一見そう思われるのは当然なのですが、実は音色も大きく関係しています。というより、むしろ音色の方が比重が大きでしょう。この件に関しては、私の他の記事でも詳しく述べていますのでそちらを見ていただければと思いますが、かいつまんで申しますと、音色を良くすれば必ずタッチも良くなるということです。この反応を悪くする一番の原因は音のこもりです。こもった音のピアノのタッチは非常に重く感じます。こもった音ですと、響きにベールがかかったような状態のために、自分が思った表現をしようとするとベールを取ろうとしてより力んだタッチでコントロールしなければならず、結果タッチも重く弾きにくい状態になります。トリルや細かいパッセージも弾きにくいです。このこもりの原因は、ピアノ本体に原因がある場合よりも、ピアノの弦を打つハンマーに原因がる場合がほとんどです。ですから、ハンマーを改善する整音という調整をまずしなければなりません。そして、それによりこもりがとれた瞬間、ピアノが別物のように生まれ変わります。自分が思った通りにピアノが反応してくれるほど、タッチの負担が少なくなるので、非常に弾きやすくなります。よくホールのピアノで弾くと自分が上手くなったように感じると聞きますが、まさに自分が今まで苦労して弾いてきたことが簡単に弾けてしまうようなことも起こるのです。そして、どちらかというとカワイの音の方がヤマハとくらべて元々音が柔らかい特徴があるので、もし音がこもっていた場合、よりそれが強調されてしまうこともあるかと思います。
音色にこもりや金属音の問題があれば、それをいくらタッチ調整の整調で解決させようとしても無理があります。まずは音色を改善する整音をした上で、それでもタッチに違和感を感じるのであれば、おもりを鍵盤に取り付けるなどのタッチ調整も検討するべきでしょう。ただこのおもりの取り付けですが、鍵盤を押す力を軽くしようとしておもりを鍵盤手前に付けると、今度はテコの原理で鍵盤が戻る力が弱くなります。やはりまずは音色を良くすることを優先的に考えるべきです。
あと、音のこもりを取ろうとしてハンマーに硬化剤という薬品をつける技術者もいますが、私はこれには反対です。今度はピアノに必要な豊かで温かみのある音を失ってしまうからです。そして、きれいなピアニッシモが出なくなります。これを改善するにはハンマーを交換するしかなくなります。
ピアノの弦を交換しても実はそれほど音は変わりません。しかし、このハンマーを交換したり調整することでピアノの音は大きく変わります。そしてタッチも変わるのです。もちろん悪く調整すれば逆にこもった音になってしまいますので、それは十分に気を付けなければなりません。こもった音と柔らかい音は全く違います。こもった音ではフォルテシモとピアニッシモが出しづらくなり音楽表現の幅が狭くなるのですが、柔らかい音ではフォルテシモからピアニッシモまで柔軟に対応でき音楽表現の幅が広がるのです。

ピアノの森・調律工房
森 一夫



 


ピアノ調律.net 編集部


 




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