Q&A: 中国メーカーの作る中国製アップライトピアノの品質は良い?

調律師さん方の視点から、この点についてどう思うのか聞いてみました。

 




Q
: Q&A: 中国メーカーの作る中国製アップライトピアノの品質は良い?



 リーズナブルな中国製のアップライトピアノを買いたいと思い検討しています。ただ、品質について不安があります。ヤマハ、カワイなど国産ピアノと比較した場合どうなのか、ピアノ調律師さんにお聞きしたいと思いました。ちなみに、中国メーカーがつくる中国生産のオリジナル・ブランドのアップライトピアノについてです。宜しくお願い致します。

ピアノユーザー様からの質問





A:調律師さんの回答







 結論から申し上げますけど、購入はやめた方が良いです。 数十年前から何度も調整してきましたが、粗製乱造形にはなっていますが、基本的に作りが甘く規格外の構造に何とかして形にしたにすぎません、安物買いの銭失いです。国産中古でも良いですから国産を薦めます。

 music takano





 率直に結論から申し上げますと、良い音、良い品質をお求めならばやめておかれた方がよろしいかと思います。
それにははっきりとした根拠があります。
私は中国製のものが全て安かろう悪かろうとは思いません。それが例えば電子機器や工業製品など日本製の製品でも中身は中国のものが入っていたりすることも多々ありますし、品質的にも十分基準を満たしているものも多いと思います。
しかし、ことピアノに関しては全く話にならない、もっと言えばピアノの形はしていても似て非なるものと言えるでしょう。
なぜならばピアノはそれぞれ外装から中の音響板、アクションに至るまで多くの木が使われており、それも一種類の木ではなく、音響板などは柔らかい木、アクションは硬い木、鍵盤はまた柔らかく軽い木というようにそれぞれ「適材適所」に様々な木が使われています。
しかも、それが1/100ミリの精密さで設計され組まれており、それが絶妙な音を奏でることになるのです。
なので、まずピアノを製造するにあたって、その品質の良い木を予め確保し、寸法などに狂いが出ないように十分乾燥させることが必要になってきます。
それは自然乾燥で30年ぐらい置いたあと、更に機械で強制的に熱をかけて乾燥させる必要があり、もし、今からピアノを作ろうとしても最低でも30数年はかかるため、とても一朝一夕に作れる代物ではないということです。
同時に今は森林資源の枯渇が進んでおり、ピアノに適した良い木を確保するのは難しい状況です。
逆に世界の有名なピアノメーカーは何十年も前から良い木を確保しているので、今品質の良いピアノが作れていると言えるでしょう。
そういった意味で、中国のような新興国のメーカーが中身を真似して電子機器のように作ろうとしても、土台無理だと言えるでしょう。
私自身もドイツの「世界楽器博覧会」で各国のピアノを指弾させてもらいましたが、中国や韓国のものはそれはそれはひどいものでした。
ピアノの技術者の養成にもかなり時間がかかりますし、
例え世界の有名なピアノメーカーから技術者を引き抜いたとしても、上記の材料の問題で良いものを作るのは難しいでしょう。
もちろんやってやれないことはないでしょう。しかし、お金にものをいわせて良い材料を集め、技術者を引き抜いたとしても、既存の有名メーカー以上に高額になることは必至で、安さを売りにしている中国がそんな割に合わないことをするとは考えられません。
現在もし、中国製のピアノが安く売られていたとしたら、どうやってコストを抑えているか、だいたい想像がつきます。
①品質の良い木が使われていない②木が適材適所に使われていない③そもそも木が使われておらず、プラスチックで多くを代用している④まともな技術者が製造に関わっていない
尚私の想像が正しければ、設計そのものがいい加減なピアノは、作られたあと様々な不具合が起こるため、本当に大変です。過去に日本製でもヤマハ、カワイ以外の三流メーカーのピアノによく当たりましたが、色々大変でした。
もしピアノを買うことを検討されるなら、ピアノにとっていちばん大切なのは良い音とスムースな鍵盤のタッチだということ、そして、それは一朝一夕には実現できないもので、値段と比例するということを申し上げておきます。




 私は12年前まで4年間上海で仕事をしていました。昔の中国製ピアノは品質が悪く全くお勧めできませんでした。新しいピアノなのに突然ペダルが折れるなど何度もひどい目に遭いました。楽器としても、工業製品としても酷いものでした。
毎年10月頃に上海で大規模な楽器の展覧会が開かれていて、世界中の有名メーカーが出展しています。ここ10年くらいは参加するたびに中国メーカーが侮れない存在になってきていることを感じています。
中国では20年くらい前から雨後の筍のようにピアノメーカーが出没してきたのですが、現在は淘汰され品質の良いピアノの製造ができるメーカーだけが生き残ってきています。
以前の中国製ピアノは高音部がキャンキャン鳴っていましたが、現在は音質的にも随分落ち着いてきています。
という事で、以前よりも品質は上がっています。

特にお勧めは「海倫鋼琴(Hailun Piano)」です。日本ではWendl & Lung(元々はオーストリアメーカーでしたが、現在は完全に中国製)などのブランドで店頭に並んでいます。
小型のグランドピアノの製造が得意なメーカーですが、アップライトも悪くはないです。フレームの作りなど基本設計がしっかりしています。
ただ、Hailunだけでなく中国製ピアノ全体に言える事ですが、日本製と比較すると細かい作りの詰めが甘い感じはします。
もし同じくらいの値段で売られているなら日本メーカーのピアノをお勧めしますが、中国メーカーのピアノは安いです。予算に制限があり、新品にこだわるなら中国メーカーのピアノも検討の対象にできるかと思います。

参考にしてください。

さいかピアノ調律所




14~5年前に1度パールリバーのアップライトピアノを調律した事があります。その時はブッシングクロスの品質が悪くキースティックが多数有り、鍵盤の木材の質そのものも乾燥具合であるとかが問題有りそうな感じがしたのを覚えています。今現在はどうなっているかは知りませんが、当時の物は良くありませんでした。




 中国ブランドのピアノ、今までもけっこう見て来ました。感想としては、特に問題はないと思います。ただ、細かい部分を気にする方は購入は控えた方がいいかと思います。たとえば、ちょっとした雑音も気になる、塗装にちょっとしたムラがある、作りに粗さを感じる、など。ただ、世界的に見ても、日本製ピアノほどきちんと作られている製品はありません。ヨーロッパのピアノでさえ、かなりおおざっぱな部分があります。ただ、そのことと音の響きは別問題で、音の響きを重視するかたは、そちらを中心に考えるべきでしょう。中国製のピアノの響きの特徴は、どちらかというとヨーロッパの響きに近いように思います。中国語を聞いてもわかると思いますが、日本語のようにキチッキチッとしたしっかりした響きではなく、流れるような響きがありますね。これはヨーロッパの言語も似たような特徴があり、国民性と言葉とピアノの響きは互いにリンクしているように思います。
いずれにしても、実際に弾いてみて買うのが一番、買うときに極端に音がこもって弾きづらく感じたら控えた方がいいと思いますし、柔らかい音に魅力を感じたら購入もありかと思います。

ピアノの森・調律工房
森 一夫


 


ピアノ調律.net 編集部


 




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