Q&A: 夏の暑い部屋に置いてあるピアノは、だいじょうぶか?

調律師さん方の視点から、この点についてどう思うのか聞いてみました。

 




Q
: Q&A: 夏の暑い部屋に置いてあるピアノは、だいじょうぶか?



 ピアノの管理のことでお聞きします。夏にとても暑くなる部屋にグランドピアノを置いています。部屋の温度は、35度以上になる日もあるかもしれません。日差しは一部に当たる時間帯があります。たまに窓を開けたりしますが、こういった部屋に置き続けていると故障などしないでしょうか?宜しくお願いします。

ピアノユーザー様からの質問





A:調律師さんの回答






 結論から言いますが、大丈夫ではありません。 昨今の世界的な温暖化により、ここ10年以上気温か上がり続けています。それに対し住宅事情は高気密構造により湿度調節がしにくく、部屋に調度品が増える度に、益々湿度調節が危うくなっています。 ましてやグランドピアノを置くスペース回りが狭ければ狭い程、湿度調節は難しいですね。

更に、、来客中の時間だけエアコンかけて一気にマイナス10℃下げて人が居なくなるとエアコンを消して温度と湿度上昇を招いています。

これにより、特にグランドピアノ内部で使用されてる真鍮素材の部品の経年劣化湿気による錆が進行、液状化して、鍵盤バランスホール内から錆と共に固着して、アクションそのものがゴミになるといった最悪な結果になりますね。 アップライトも同様の症状が見受けられます。

現状維持したければ、人間同様の換気温度管理しなければ無理です ピアノ内部の湿度調節器も市販されていますから、取り付けるべきでしょうね、  ではでは 

 music takano





 ピアノが35度以上の環境に置かれた場合、使用されている金属、特に弦は膨張して伸びます。その結果、音律はかなり変化して狂います。そして、温度がもとに戻ると弦の膨張も戻り、音律も戻りますが、完全にはもとの音律に戻りません。この様に、毎日の温度変化に伴う音律変化が重なり、物凄く調律が狂ったピアノになります。 勿論、弦の寿命にも影響します。 参考までに、湿度の変化に関しては木材部分、特に響板の 変化があり、これも調律の狂いの原因になります。 弦と響板に限らず、他の部品も膨張・収縮を毎日激しく繰り返せば、ピアノの状態は安定せず、故障も多くなり、寿命も短くなります。

ピアノ調律アミュース




 日本の夏場でよくあるシチュエーションですが、ピアノには良くないので出来るだけ高温多湿にならないようにエアコンを入れる等の対策をする方が良いです。 高温になるとピアノの木質部が膨張し、響板の真ん中あたりが張れ上がり、弦は持ち上げられ音程が上がります。それは中音部を基準に考えると両端(高音部と低音部)が音程が下がったと感じられます。
高温になるほうが湿度も上がりやすいので多湿が加わると、ブッシングクロスが真っ先に影響を受けて、スティックを起こしやすくなります。鍵盤が上がって来にくくなったり、音を止めるダンパーが引っ掛かり止音不良になったりします。しかしこの様な環境の中で調律調整を何回かしてあるピアノは、トラブルが起きない可能性も大きいので、夏場ピアノの為にエアコンをつけるのはもったいないと思われる方は、一度は高温多湿の中で調律調整をしておくのが良いでしょう。調律師さんは大変ですが。
上記に記しました、響板が膨らみ音程を持ち上げる症状は、ピアノの響板の強さや健全さと、いつ弦が張られたピアノか、によって変わって来ます。ピアノが新しいと(弦が張られてから短い期間)高温で弦が膨張して音程が下がるので、響板で持ち上げられても、弦の膨張が勝って、結果的に音程が下がる場合もあります。ピアノが古くなるに従って弦が伸びては調律で引き揚げられを繰り返すので、古くなって来ると、35度位では弦は膨張しなくなってきます。そうなると響板の膨張の方が、勝って、中音域の音程が上がる現象に変わります。逆に言えば夏場中音域が上がるか、上がらないかでピアノの若さが解るとも言えます。
ただ厄介なことにピアノによっては響板の膨張現象が起きないピアノも有ります。そのようなピアノは張りの有る艶やか響きがしてくれないピアノが多いです。

音楽文化堂ピアノワールド
福島 雅明





 ピアノが置かれている環境、おもに4つあると思います。

1:高温乾燥
2:低温多湿
3:高温多湿
4:低温乾燥

ではどれが一番ピアノにとってよくないか、以外に思われるかもしれませんが1の高温乾燥です。ピアノの木の水分が失われひび割れなどを引き起こしやすく、一回そのような状態になると基本的に元には戻りません。ときには大きな修理を必要とします。冬場のエアコンや床暖が効いた部屋は要注意です。 次によくないのが2の低温多湿です。主に梅雨時期ですね。鍵盤の動きが悪くなったり音が出ずらくなったり鳴りが悪くなったりします。今年は梅雨が長かったので、このような症状が出たピアノが多かったですね。ただこの場合、乾燥させれば再び元に戻ります。また修理が必要になることもありますが、1ほどの大がかりな修理にはなりません。
今回のご指摘は3にあたりますね。ピアノにとっては決してベストとは言えませんが、ピアノにたまる湿気が高温によって逃げるので、その意味ではまだいいでしょう。梅雨明けに音が鳴り出すのも、温度が上がることで湿気が逃げるからです。しかし、勿論直射日光はよくありません。カーテンなどをしてピアノを熱から守る必要があります。
4の低温乾燥がピアノにとってはベストです。そのような環境の欧州がピアノの起源なのもうなずけるでしょう。日本でいえば10月から5月にかけてがピアノに適した季節ですね。 1年を通して気候の変化が大きい日本、ピアノにとっては過酷な環境で、そのことで大きな音の狂いも生じさせます。出来れば除湿器、加湿器を使用して出来るだけ環境を一定に保つように心がけたいですね。

ピアノの森・調律工房
森 一夫


 


ピアノ調律.net 編集部


 




バックナンバー一覧


メルマガ登録・解除 ID: 0000236488
人気調律師達がやさしく語る♪ピアノと調律に役立つ話
   
バックナンバー powered by まぐまぐトップページへ

---------------------------------------------------------------------




■調律師への質問

ピアノや調律にかんして疑問・質問があれば、ぜひピアノ調律.netの登録調律師に質問してみてください。
読者のみなさんに参考になるご質問に関しては、調律師より回答し、メルマガ上で公開いたします。

具体的なご質問、どしどし、お寄せくださいませ。
お待ちしております。
質問・疑問はこちらのフォームから。


■執筆者への感想・メッセージ

感想・メッセージは、こちらのフォームから。
「~さんのメルマガ記事感想」と題して、記事の執筆者名を明記してお送りください。
いただいた感想は必ず執筆者までお届けします。
ただし、執筆者からのご返信は確約できかねますので、その点、どうぞご了承ください。

執筆者も、感想を楽しみにしていますので、どしどしお待ちしております。

---------------------------------------------------------------------

■ 
□■ ピアノ調律師は、もう自分で選ぶ時代です。 

好みのピアノ調律師を選べるサイト

----------------------------------------------------------------------
メールマガジン 【人気調律師達がやさしく語る♪ピアノと調律に役立つ話】
----------------------------------------------------------------------
□ 発行・編集 : ピアノ調律.net 
□ ウェブサイト : 「ピアノ調律.net」 
□ 配信期間 : 不定期
□ 社内・友人など転送はご自由です。
□ ご意見・ご感想はこちらからお願い致します!

----------------------------------------------------------------------
     Copyright (c) 2008 ピアノ調律.net. All rights reserved. 
----------------------------------------------------------------------