Q&A: 古いピアノは、調律しにくいか?

調律師さん方の視点から、この点についてどう思うのか聞いてみました。

 



Q
: Q&A: 古いピアノは、調律しにくいか?


 ピアノ調律師さんが、とても古いピアノで調律しにくいものがあると言っているのを耳にしたことがあります。古いピアノで調律しにくいといったピアノは、実際あるのでしょうか?またその場合、なぜなのでしょうか。おしえてください。

ピアノ調律.netからの質問





A:調律師さんの回答






古いピアノの場合、定期的に調整しているか?していないかで、判断が分かれます。

 定期的に調整しているならば、調律しやすいピアノが多いです。

やりにくいのは、10-30年放置したピアノがやりにくいのだと思われます。我々日本人が住んでいる日本は、現在急速に亜熱帯化しています。、これはゆゆしき問題で、1950年代の通気性のある家ならまだしも、現代建築はサッシ構造でエアコン無しでは生活出来ない構造になっています。更に悪いことに、ピアノを弾かなくなると同時にメンテナンスをしなくなる傾向になり、更に悪いことに、キーカバーを蓋の中に放置して蓋を開けない方向になっています。
そもそもキーカバーは蓋を開けっぱなしにしてすぐ弾けるようにするためのカバーで、閉めっぱなしにすることで、鍵盤の表面にある指の油がキーカバーの内側に付着してゴキブリやヒラタキクイムシノの巣窟になっています。
嘆かわしいことです。
更に悪いことに、ワックス成分がついたダスキンが広く出回っていることから、綺麗にする行為がますますごみを付着するという悪循環になっています。
ダスキンも本当のことを言わずに売っていますね

兎に角狭い家の中で長期間放置すると、ピアノの場合かなりのダメージになります。専門家の意見は聞いて行動しましょう。

music takano






実際あります。調律はチューニングハンマーという工具で、チューニングピンを回すことにより、ピンに巻き付けられている弦を、より強く張ったり、緩めたりして音律をつくっていきます。
チューニングピンはピン板にあけられた穴に打ち込まれていますが、この打ち込みの馴染み具合(抵抗感)により
チューニングハンマーの操作に影響してきます。
これを我々はピン味と言っていますが、古いピアノはこの抵抗感が強かったり、弱かったり、斑が多いため音律が
安定しません。
又、古いピアノは弦の経年変化のため、チューニングピンを回しても、張ってある弦がスムーズに反応してくれないことがあります。これを弦の渋滞と言っていますが、大変調律しにくい現象の一つです。
更に、よく高音域でみられる現象で、中音域から高音域は一つの音を3本の弦で出していて、この3本を同音にすることをユニゾン合わせと言っていますが、弦の経年変化により、弦が1本でうなりやノイズを発生しやすくなり、結果的にユニゾンが合いにくく、音色的にも斑がでる原因になります。
その他、弦以外の部分の経年変化により、調整や音色も斑が多く、調律の前に整える必要があり、やはり古いピアノは調律が大変です。




古いピアノが調律しにくい原因は色々とあると思います。例えば、

1:調律が極端にずれていて、安定させるまでが大変

2:内部の調整が極端にズレていたり部品が消耗してタッチが不安定

3:音色が極端に悪く、音がつかみにくい

4:チューニングピンが柔らかすぎて音がすぐに狂う


どういうことが、具体的に説明していきましょう。


1:古いピアノは調律していない期間が長いものが多く、時として半音近くピッチが下がっているものもあります。安定させるまでに手間がかかります。

2 3:調整や音色の影響で調律しづらいということもあると思います。年数が経つと消耗部品も多くなり、音色も悪くなってくることもあります。これらの改善をした上で調律することがベストでしょう。

4:古いピアノで特に問題になるのが4のチューニングピンが緩くなる現象、それで調律が極端にずれやすくなることです。経年によって木は痩せてくるので、チューニングピンが刺さっている木の部分が痩せてピンが緩くなって音が狂いやすくなってしまうのです。これを直すには、太いピンに交換するか、応急処置としてピンをハンマーで打ち込むしかありません。部分的な修理で済めばまだいいのですが、症状が広がると全体修理のオーバーホールが必要になります。

ただオーバーホールまで必要になるのは60年以上年数が経ったピアノが殆どです。
最近はちょっとでもピアノの状態が良くないとすぐに買い替えを勧めたり、高額な修理代を請求する業者や技術者も多いように感じます。でも、行って見てみると、買い替えや高額な修理は必要ないのではと思われることも多々あります。出来れば思い入れのあるピアノは末永く使いたいと多くのユーザーのかたは思っていると思います。そしてユーザーのかたが何よりも望むもの、それはピアノの音やタッチが良くなることです。その修理や調整が本当にそれを実現するのか、きちんとそのことを確認した上で修理の依頼をしたほうがいいでしょう。業者があまりにも高額な修理の見積もりを出してきたり、しつこく買い替えを勧める時は、必ず他にも見積もりをとってもらったほうがいいでしょう。今はネットの時代、看板力だけでなく多角的に技術者を選べるようになり、本当に良い時代になったと思います。


ピアノの森・調律工房

森 一夫


 


ピアノ調律.net 編集部


 




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