Q&A: フルコンサートグランドピアノのコントロールしやすいタッチ感は、通常サイズのグランドでも再現できる?

調律師さんの視点から、この点についてどう思うのか聞いてみました。

 



Q
: Q&A: フルコンサートグランドピアノのコントロールしやすいタッチ感は、通常サイズのグランドでも再現できる?


 KAWAIのEXというフルコンサート・グランドピアノを弾く機会がありました。非常に軽く弾きやすいタッチ感で、小さくやわらかい音から強く尖った大きな音まで、多彩な音色と音量をコントロールしやすいピアノだと感じました。こういったタッチ感は、通常の家庭用で2メール前後のグランドピアノでは再現できず、2メール80センチほどのフルコンサートグランドピアノならではのものでしょうか? 通常の家庭用サイズのグランドピアノでは、ほとんどあのようなタッチ感を感じたことが経験上なかったので、お聞きしました。どうぞ宜しくお願い致します。


ピアノユーザー様からの質問






A:調律師さんの回答




結論からもうしあげますが、再現は厳しいです、
近付けることはできますがねー

フルコンのサイズに入っているアクションの鍵盤の長さが
基本的に長いし、ホールのピアノはイベントごとのメンテナンスもしてありかなり定期的に調整してありますからね、

しかも湿度調節も厳密に調整してありますよ、

一般の家庭でのグランドピアノの扱いはかなりずさんなことが多いので。湿度調整すらままならないことが多いです。
ステータスだけでグランドピアノを持ってることが多いので
メンテナンスがおろそかにしている方が多すぎますね、

調律師さんに相談して一番よい方法を模索さて下さいね。

MusicTAKANO






ピアノのタッチ感というものは鍵盤やハンマーのサイズ、重さや材質のわずかな違い、調整、調律、整音状態、それからピアノ本体の弦や響板の反応など様々な要素が複合的に影響しあってピアノを弾く人にその印象を与えるものです。

 大きなピアノと小さいピアノでは鍵盤やハンマーのサイズや重さ、ピアノ本体(弦やフレーム、響板)の寸法等、どれをとっても違いますので、小さいピアノで大きなピアノのタッチ感を求める、ということは難しいと言えます。

 一方、例え大きなピアノでも調整や調律、整音等が上手く出来ていなければ、質問にあるコンサートピアノの魅力的なタッチ感は出てこないと思います。質問者さんが弾かれたEXはきっと本体の素晴らしさと相まって、調整や調律、整音の状態も良かったのではないかと思います。

 もう一点大きなピアノと小さいピアノの相違でのタッチに与える影響として鍵盤の長さの問題があります。演奏者が触れる白鍵や黒鍵の部分のサイズは大きいピアノも小さいピアノも同じですが、その奥につながる鍵盤のシーソー部分は大きいピアノほど長く設計されています。これに対して鍵盤の沈む深さはピアノのサイズに関わらず概ね10ミリですので、大きなピアノの奥が長い鍵盤の方が同じ10ミリ沈むにしても、それに要する角度はより少なくて済むのです。鍵盤のように回転しながら動く物体に働く力は「回転モーメント」という物理量で表されますが、支点からの距離が遠いほど有利に働きます。同時に弦を打って戻って来たハンマーの力もより効率的に手元に伝わります。つまり奏者のタッチでより多様な変化を付けることが出来て、その変化を鍵盤からより繊細に感じ取ることができるというわけです。

 以上大きいピアノの有利な点について述べましたが、例え小さいピアノでも適切で入念な調整や整音を施すことによって最大限に表現機能を高めることはできます。住宅事情や予算の関係で小さいピアノをお使いの方も、是非調律とともにきちんとした調整や整音ができる技術者を見つけて、お手持ちのピアノの機能や能力を最大限に引き出すことをお勧めします。


株式会社クオルピア

倉田尚彦

 










ピアノ調律.net 編集部


 




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