【ピアノと調律】のメルマガ・バックナンバー 08年12月15日

湿気だけじゃない!乾燥しすぎもピアノの大敵

■今回のメルマガ執筆者

中嶋ピアノサービス  (東京都青梅市)


こんにちは!
中嶋ピアノサービスの中嶋です。

冬は空気がとても乾燥する時期ですが、乾燥しすぎの状態がピアノにとってよくないことは、意外と知られていません。
ユーザーのみなさん、ピアノが湿気に弱いことはご存知の方も多いのですが。

そこで今日は、この過乾燥がどうしてピアノにダメージを与えるのか、お話しできればとおもいます。



「うちのピアノずいぶん調律してないんだけど、修理をしたほうがいいですかね…?」


以前あるお客様のお宅に伺った時に、そう質問されました。

この奥様は旦那様と二人暮らし。
そこにあるピアノは、娘さんのために40年位前に購入されたもので、
今はお孫さんが遊びに来た時に、少し弾く程度とのことです。

「孫が来ると、にぎやかになって大変なんですよ~」と笑顔で奥様。

まだ小さいお孫さんがかわいくてしかたないらしく、
孫の話になると止まりません。

そんなお孫さんにそろそろピアノを習わせたい、ということで調律のご依頼を頂きました。

調律は10年程やっていないとのことです。

ピアノはキッチンとつながったリビングに置いてありました。
カワイの『KU-3D』という機種で、
高さ132㎝と、アップライトピアノの中では大きなタイプ
です。

早速ピアノをチェックしてみると・・・
長く調律していなかった割に状態はそんなに悪くない。
ただ、音が弱く、なんだかぼんやりした印象です。

しっかりと作られているため、
古いカワイのピアノにありがちなハンマーのはがれなども無く、
このピアノであれば、もっと音がしっかりと鳴っても良いはず・・・。

こういった場合、弦を打つハンマーの形や硬さ、整調の不具合などいろいろ原因は考えられます。

・・・しかし、
それよりもまずやることがあります。

ドライバーを手に、ハンマーが取り付けてあるネジを右に回してみると・・・

ネジがしっかり締まっていればそれ以上右には回らないはずです。
少し緩んでる程度であれば「クッ」と軽く回る程度なのですが、
このピアノのネジは「ぐるんっ」と大きく回ります。

「あぁ・・・これはかなりネジが緩んでいる。」と、
心でつぶやきました。



この場合、緩んでいるのがこのネジだけという可能性はまずありません。
他の部分も確認してみます。

ピアノ本体、内部に至るまでほとんどのネジが緩んでいる様子。
ペダルのネジも緩んでいるため、踏むとカタカタと揺れています。

これでは、調律どころではありません。
ネジは、当然、しっかりと締まっていなければいけませんから、まずはネジ締めからはじめないと!

ピアノをばらし、400か所以上あるネジを全てしっかりと締めました。

「ふう・・・」
やれやれというかんじで、おもわず息を大きく吸ってはきだしました。
たくさんのネジを一気に締めるのはなかなか大変なのです。




ネジを締め直して弾いてみると、明らかに大きく、はっきりとした音になりました。
鍵盤を弾いたときの手の力がしっかり伝わるようになったことと、
音の振動がピアノ全体に行きわたり、しっかり鳴るようになったためです。

緩んでいたネジを締め直すと、なんだか弱気になっていたピアノが自信を取り戻したような感じがして、
嬉しくなります。

音に、その自信が表れています。

その音を聴いたお客さまが

「あら、音が明るくなりましたね!」

とおっしゃいましたが、

「すみません、まだネジを締めただけなんです・・・。」

と、わたし。

その後、しっかり調律をして、簡単な修理・整調をしただけで音が劇的に良くなりました。


では、どうしてこのお客様のピアノは、こんなにもたくさんのネジが緩んでいたのでしょうか?

10年以上経っていたから?
それはそうなんですが、たとえ10年以上たっていても、それほどネジが緩んでいない場合もあります。

温度・湿度の変化や、演奏による振動などで、ピアノのネジは徐々に緩んでくるのがふつうです。
でも、これほど緩むのには、わけがあるのです。



このお客様の場合、たくさんのネジの緩みの原因は、お部屋にあった除湿機でした。
もともと湿気がちな部屋だったため、ほぼ1年中除湿をしているそうです。

その結果、ピアノのある部屋が乾燥し過ぎてしまい、ネジが極端に緩んでしまっていたのです・・・


ピアノは湿気に弱いとよく言われますが、乾燥しすぎも問題です。

弾いているときに“ジーン”とか“カチャカチャ”と雑音がしている場合、ネジが緩んでいる可能性が高いです。
部屋の環境が乾燥し過ぎていたり、1日の中で温湿度の変化が激しい場合もネジが緩みがちです。

調律の際は、普段のお部屋の環境なども伝えて頂くと、調律師もネジの緩みを予測しやすくなります。

ネジの緩みを少なくするには、ピアノが置いてあるお部屋に気を配ることで、ある程度防ぐことができます。
ピアノにとっての最適な湿度は60%前後ですが、特にこれからの冬の時期、空気が乾燥しているため、部屋に加湿器を置いたりするなどして対策をしましょう。

また、観葉植物などを置くのも、意外と効果的です♪
その際、くれぐれも湿度の上げ過ぎには注意して下さい。

こういった湿度のコントロールには、湿度計があると便利です。
ピアノのあるお部屋にひとつ、用意しておきたいものですね。


↓薄型湿度計です。オシャレ!





中嶋ピアノサービス  (東京都青梅市)





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