ピアノコンクール対策や指の強化のため、鍵盤をあえて重くするのは正しい?
- ピアノコンクール対策として、指を鍛えるためにあえて鍵盤を重し、練習するのはどうでしょうか?
今回は指を鍛えるため、あえて鍵盤を重しトレーニングすることについて、ピアノ調律師さんの意見を聞いてみました。
ピアノコンクール対策や指の強化のため、鍵盤をあえて重くするのは正しい?
ピアノ調律師さんからの回答をご覧ください。
調整されたタッチを変えて重くするのは、ピアノのために勧められません
ピアノ調律さん 談
確かに指を鍛えるためにタッチを重くするという考え方もありますが、せっかく調整されたタッチを変えて重くするというのは、ピアノのためにはあまり勧められません。
それよりも、手(指)に重りを付けてスポーツ的に鍛えるとか、腕立て伏せや指立て伏せで鍛えるとか。
あるいは、自分の好きな曲をゆっくりと、一音一音しっかり 意識して確認しながら練習するという方法も効果があるようです。
更には、机の上で親指、人差し指、中指、薬指、小指、薬指、中指、人差し指、親指の順で机をたたき、これを繰り返し練習するという方法もあるようです。
ピアノにとって何がふさわしいのか、脱力された状態でしっかり支える指が必要
ピアノ調律さん 談
近年、コンクールご参加の方のお客様が大変増えてきましたところ、こちらのテーマが目に留まりましたのでご回答させて頂こうかと思いました。
まず、負荷を大きくすれば、大きな筋肉を使うことになることかと思います。 大きな筋肉は持久力が少なく、また音も太く出やすくなると思います。(特徴が違う)
例えば陸上選手が、ダンベルをもちあげたりの主に大きな筋肉をつけようとしない理由があって、重量上げでは逆により負荷の大きなもので、トレーニングすることかと思います。
ピアノにとっては何がふさわしいのかということになるかとおもいますが、一般的に脱力された状態でしっかり支えれる指が必要といわれることがおおく、しっかりした指があれば余計なとことに力が入れずに弾けるといったことのようです。
鍵盤を重くしてしまうと、指に負荷がかかる以前に常に大きな筋肉(手首、腕、肩)に頼った演奏をしざるを得ないことに着目するべきかと思います。
お子様に対して、と限定すると自分の意志でピアノを選ぶことができない環境が多いでしょうし、均整のとれたピアノで練習することは、練習時間の延長や、表現のたのしさ(表現しやすい調整のとれた鍵盤)をまず手に取って感じるきっかけに大切なことのようにおもいます。
お客様でも名門入学や良い賞などを取られる方の多くは根本的に音楽の素養が自体が高いことが挙げられるように思います。
「指」のトレーニングというのは、ピシュナやハノンといった教本において、自重の負荷のかけかたは自身で自在にできるわけで(フォルテで弾く、ピアニシモで弾く、手首で弾く等 早く弾く 遅く弾くなど)といった工夫は様々可能でしょうし、またどうしても重たい鍵盤や違う鍵盤に触れたければ楽器店などの教室をレンタルして触れる機会、選ぶことはできることかと思います。
また、単純に重い鍵盤から軽い鍵盤へ移行したときに単純に絶対的に弾きやすくなるわけでもなく、これまたコントロールの抑制が効かない状態にもなりえるかと思いますし、重い=弾きにくいといった単純なことで割り切れないほど様々な癖をもったピアノが多数あります。
逆に一般的に軽い、とよればれる鍵盤の多くは使い込みによりガタツキの多いピアノと混同されてしまっていて、こういったピアノはパカパカっとした安易な音がでてしまい、表現の肉付けができないピアノがあり、この状態を主に指摘されて、重いものを、といった流れになっているようにも感じます。 これも消耗品をきちんと修理した方が良いと思います。
分銅などで適正な重量がでていて、それが均質に出る状態(内部の汚れ落としや環境調整)に調整をしておくこと、弾き易しい、弾き難しいではなく、本当の意味で「弾きやすい鍵盤」を作り、特にお子様にとって表現の根本的な楽しさや意欲、また先生からの指摘に対してスムーズに手元で表現できる鍵盤を作りあげるのが調律師の本当の大きな仕事かと思います(調律以外に定期的に別途全体調整が必要です)
タッチを重くすることで腱鞘炎になったり(結構いらっしゃいます)
我孫子ピアノ技術所
(千葉県我孫子市中峠)
木村さん
結論からいいますとタッチを重くしてもさほど指を鍛えることはできないと思います。
逆にタッチを重くすることで腱鞘炎になってしまったり(結構いらっしゃいます)、弾き辛さでストレスを感じてしまったりする方のほうが多くなるのではないでしょうか?
鍵盤は公園に置いてあるシーソーと同じでテコの原理を応用して作られています。力で無理矢理叩いても音は良くなりません。
重要なのは指の力よりも鍵盤にたいしての力の乗せ方です。
わたしの感想としましては、音色を良くしたい・速く弾けるようになりたいという場合はタッチを重くするよりもハノンやツェルニー等を1日30分以上練習されることをお薦めします。
ハノンやツェルニーをすることによって音のバラつき・弾く速度は劇的に向上すると思います。
タッチが重いとは具体的にどのような状態か、そこからご説明しましょう
ピアノの森・調律工房
(埼玉県さいたま市浦和区)
森さん
コンクール対策でタッチをあえて重くしたほうがいいか。
まずはタッチが重いとは具体的にどのような状態か、そこからご説明しましょう。
- 1.物理的に重い
- 2.音色や響きが影響して重く感じる
1は言うまでもなく何グラムという重さのことです。標準的には鍵盤一つ押す力として50グラムが設定されていますが、ピアノによっては60グラム近くあるものもあります。
2は音色が明るい、柔らかい、良く響く、こもっている、キンキンする、など音色や響きによるタッチの感じ方による重さです。一般的には明るい音のほうが、少ない鍵盤を押す力でポーンとピアノが鳴ってくれるので軽く感じます。
逆に鳴りの悪いこもった音ですと、力をいれて大きな音を出そうとするので、結果重い鍵盤を押している状態と同じになり重く感じるようになります。
2は中々イメージしづらいかもしれませんが、実際に体験していただくと明らかに違います。
それで、今は重りを簡単に鍵盤に取り付けることができるようになったので、1の物理的な重さは簡単に調整できるようになりました。
気に入らなければその重りを簡単に取り外すことができるので、いわゆる昔の人気アニメに出てきた大リーグボール養成ギブスのような感じで、重い鍵盤にならすことは出来るかもしれません。
ただ、そのことで指を痛めては元も子もありません。できるだけ自然なタッチと感じられる50グラム付近に調整しておくことが良いと思います。
問題は2です。コンサートのピアノも含め、色々なピアノを今まで見てきましたが、音がこもっていて鍵盤を強く押し込まないと鳴ってくれないピアノ、強く押しても鳴りづらいピアノが結構あるのです。
で、家のピアノが鳴りやすく、ホールのピアノがそのような鳴りの悪いピアノだったとすると、そのギャップに戸惑うというケースも当然でてきます。
では、家のピアノをそのような鳴りが悪く表現力を出しづらいピアノにしたいと思うでしょうか?
多くのかたは否定すると思います。そして、このようなピアノでは表現力を鍛えることはできないと思います。
また、先ほどの物理的な重さの調整は元に戻せるのですが、音色の調整は基本元に戻せません。
あと、家のピアノのタッチが軽すぎるという場合もあります。
たとえばキンキンする音の場合、少ない力で簡単に音がでてしまうので軽く感じるのですが、綺麗なピアニシモやフォルテシモを出そうとすると逆に力んでしまい、タッチにへんな癖がついてしまうということにもなりかねません。
また、ハンマーを硬くする薬品が付けられたピアノがたまにありますが、この場合も簡単に大きな音がでてしまうのでかなりタッチが軽く感じると同時に、ピアニッシモが特に出しづらくなり表現力の乏しいピアノになってしまいます。
電子ピアノも、タッチの重さは生ピアノと同じ50グラムに合わせてあるのですが、少ない力で簡単に音が出てしまうために、生ピアノを弾くときにかなりのギャップを感じると思います。
このように「軽すぎるタッチ対策」も考えておかなければならないでしょう。
私は、家のピアノは表現力をつけやすい楽しく弾ける状態にしておくことが基本だと思います。
その上で、もし他のピアノに合わせられるか不安がある場合は取り外し可能な重りを取り付けるか、またはピアノのタッチ調整によって多少重い状態にしておくということをお薦めします。
ピアノは他の楽器と違って自分の楽器を持って行けないという宿命があります。(最も著名な音楽家で、世界中に自分のピアノを持ち運ぶかたもいますが)
ですから、どうしてもそのピアノに合わせなければなりません。
そのためにも、できるだけリハーサルでピアノを弾いてそのピアノのイメージを自分の中に入れておく、また色々なピアノを弾く機会をもうけて、どのようなピアノにあたっても出来るだけ動じない柔軟な心構えを前もってつくっておく、そのような準備も必要かもしれません。
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