Q&A: 冬に乾燥しすぎてもピアノはだいじょうぶ?

調律師さん方の視点から、この点についてどう思うのか聞いてみました。

 



Q
: Q&A: 冬に乾燥しすぎてもピアノはだいじょうぶ?


 いま冬の12月で、部屋がとても乾燥する部屋にピアノを置いています。湿度が40%を下回ることもよくあります。ピアノには湿気がよくないと聞きますが、このような冬の時期の乾燥しすぎる状態はだいじょうぶでしょうか?

ピアノユーザー様からの質問





A:調律師さんの回答




結論から言います。 日本の現代の気候では、
大丈夫です。但し田舎あるあるで、今はやりの薪ストーブがある現代建築で、5メートルから外側であれば大丈夫です、

首都圏に近ずけば、部屋のサイズが小さくなるので要注意ですね。
あと、都会あるあるで、オイルファンヒーターやアラジンタイプの対流式のストーブで、乾燥するからと言って、ヤカンをかけて湿度調節の振りをする無知な顧客が居ますから、直ぐにやめてほしいものです。

直ぐにピアノがダメになります
あとエアコンの風が直接当てるのも、NGですね。
先日完璧に仕上げたグランドにエアコンの熱風を当てて直ぐに駄目になり、ハンマーからアクションまで再調整した顧客がいました。

レクチャー後でしたから。此方もショックでしたが、何とかしました。

ピアノ専用の部屋があるのは、レスナー以外はごくごく少数です

オイルファンヒーターを使用している方は直ぐに中止して下さい。
代用品としては、セラミックファンヒーターがお勧めです。
ピアノを長く使いたいのならですが。

レポを良く読んで、実践してくださいね。
music takano





乾燥しすぎると、アクションのネジの緩み、調律の狂い、ダンパーフェルトの縮みにより低音弦の音が止まらない、などの原因になります。
酷い場合は響音の割れも起こります。
やはりピアノには適度な湿度も必要だということもわかります。


リトルぴあの工房

五十嵐 友美






結論から言いますと、決して良くありません。
ピアノの材料は木材が多く、乾燥によりこれらが変化してきます。一番の変化は響板で乾燥によって収縮すると、音律のピッチが下がり調律が狂います。特に中音部の音程が下ります。
極端な場合、響板が割れてノイズが出て、音に張りが無くなります。
他には、フレンジが収縮するとこれを固定しているビスが
緩み、極端な場合ハンマーの動く軌道が変化して音色が
変化します。
また、ハンマーシャンクが変化して、弦に対して正常な位置で打弦できなくなり、音色が変化します。
ピアノに使われているフェルと類も乾燥で変化して調整が狂ってきます。
チュウニングピンが打ち込まれているピン板が乾燥するとピンが緩くなり、調律がもたなくなります。
ハンマーフェルトも乾燥すると音色に艶が無くなります。
ピアノにとって湿度管理は大変大事なことで、恒温恒湿
が理想ですが、四季のある日本では、夏場で60%以下に
冬場では40%以上が目安です。





乾燥しすぎ、良くありません。実は湿気よりも乾燥のほうが怖いのです。まずは湿気、乾燥による症状の違いを見てみましょう。

湿気による症状

・鍵盤の動きが悪くなる。
・音が出ずらくなる。
・音がこもる。

乾燥による症状

・内部の機械部分のネジなどが緩んで雑音が出る。
・チューニングピンが緩くなり音が狂いやすくなる。
・響板にヒビが入ったり、響板と響棒が剥がれて雑音が出る。

どちらのケースも修理が必要になりますが、問題となるのが修理代です。鍵盤の動きが悪くなったり音が出ずらい原因は、主に内部の部品が湿気により動きが悪くなることで起こり、修理代は4~5万くらいといったところでしょうか(ただ、この金額は技術者や楽器店によっても結構違って、もっと高いケースもあります)。一方、チューニングピンの緩みと響板のヒビや剥がれの原因は、乾燥によって木が痩せることで起こります。こちらはオーバーホールが必要になることもあり、その場合の修理代は30万以上です。5万も決して安いとはいえませんが、30万となるとちょっと考えてしまいますよね。基本的に木というのは、湿気で膨らんだものは乾燥させれば元に戻りますが、一度乾燥で痩せたものは元に戻りません。それ故に大がかりな修理が必要になってしまうのです。
よくピアノは乾燥気候のヨーロッパに向いていて、湿気の多い日本には合わないと思われがちですが、それは夏に限ったことです。春と秋に関してはそれほど変りませんし、冬に関しては特に日本の太平洋側はヨーロッパ以上に乾燥しています。
そして、その冬の乾燥に輪をかけてさらに乾燥させてしまうのが日本の最近の住宅事情です。多くの家でエアコン暖房や床暖房などを使うようになり、このことがさらに乾燥に拍車をかけます。昔のストーブの上にヤカンを載せてという光景はほとんど見なくなりました。
そして、さらにそれに輪をかけるのが、多くのピアノが30年以上前の高度成長期に作られたものであることです。ピアノの寿命は一般に60年くらいと言われ、その原因は経年によって木が痩せて上記のようなチューニングピンの緩みや木の割れを引き起こすことですが、4、50年経ったピアノが乾燥にさらされると、より早くにそのような状況になり寿命を縮める可能性があります。勿論新しいからといって油断するのも禁物で、1年1年の積み重ねで気が付くと早い段階でそのような状態になってしまうこともありえます。
対策としては、決して油断せずにそのような状況をつくらないことです。例えば、加湿器を使う、必要が無いときはエアコンのスイッチを切る、部屋に仕切りがあるときは仕切ってエアコンの暖気がピアノに向わないようにする、などです。
あと、乾燥するとピアノのピッチの低下を招きやすくなります。そのことで音の狂いを早めます。夏場は逆で、湿気によりピッチの上昇を招きます。そのことを防ぐには、除湿器や加湿器を用意して出来る限り湿度5、60%を保つことですが、中々難しいかもしれません。リビングに置いてあるピアノよりも、離れたあまり利用しない隅の部屋に置いてあるピアノの音のほうが狂いにくいのですが、リビングよりも冷暖房の影響を受けにくいからです。
日本のピアノがヨーロッパのピアノより厳しい環境にあると言われるのは、湿気が原因と言うよりも、日本独特の夏と冬の極端な気候の違いが原因なのです。多くのかたは湿気のほうにばかり注意を払いがちですが、実は乾燥も十分に気を付けなければならないことも認識していただけたらと思います。

ピアノの森・調律工房
森 一夫


 


ピアノ調律.net 編集部


 




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