Q&A: ピアノの整音の際に硬化剤を塗ることに賛成か?

調律師さんの視点から、この点についてどう思うのか聞いてみました。

 



Q
: Q&A: ピアノの整音の際に硬化剤を塗ることに賛成か?


 以前知人宅に行った時に、ハンマーに硬化剤が塗られたヤマハのグランドピアノを弾く機会がありました。音色はカンカンして深みがなく、おせじにも豊かに響くという感じがしませんでした。このピアノの持ち主でさえ、その音に不満を持っているようでした。整音をするときに調律師がそれを塗ったとのことですが、この薬を塗ることの是非について、経験豊かな調律師さんからご意見を伺えればと思います。宜しくお願い致します。


ピアノユーザー様からの質問






A:調律師さんの回答


簡単に言うと、使われている硬化剤によります。
可塑剤が入っている硬化剤ならば、乾いても柔らかいままなので大丈夫です。
しかし、一般的によく使われているニトロセルロース系の、乾くと硬くなる硬化剤は、ハンマーの表面がざらつくことで雑音の原因になります。

ここで、どの硬化剤が悪いものなのかは本来ならば察して欲しい所ですが、例えばYouTubeの動画でコンサートの演奏を見るなどして、どの演奏者の動画でも金属的で耳障りな音がするピアノのメーカーのものはダメだということです。
ぶっちゃけ、日本の某有名メーカーらはそこら辺の技術力が、ドイツやニューヨークやイタリアの一流品のピアノに比べて遥かに劣っているため、ピアノ自体からも金属的な音がする上に、そこで使われているハンマーの硬化剤もニトロセルロース系のものを使っています。
それゆえ、それと同じ硬化剤を使っている質問者さんのピアノは、おっしゃったような金属的で深みのない音になっていることが考えられます。

髙原渉吾




硬化剤の是非については、ピアノメーカーもやっていることなのでなんら問題ありません。しかし、今回の質問は、硬化剤の使い方に問題があるようです。

「お客様の家で硬化剤を使う」は、お客様の何らかの希望があってやります。硬化剤を使う場合は、その量を十分に考慮して使用し、数日の経過後、整音が必要です。

本来、硬化剤を使用するのは、一番最後の手段として使います。整調作業でも音色や音量が変わります。その後、調律を起ちあがりの良い音に合わせれば、やり過ぎた感もなくまとめ上げられます。それでも、足りない場合に硬化剤を使用します。

硬化剤の使用は、熟練の調律師の作業が望ましい。






ピアノの整音の際に硬化剤を塗る事に賛成か?

私は基本的に硬化剤は反対です。
一度硬化剤を使用したハンマーは元には戻らないのです。
一般的に弾き込んだハンマーは打弦点が面になり、蜜度が増した状態です。
ファイリングでハンマーの形を整え針刺し作業で硬さを調整するべきでしょう。
特に中音域、次高音域での整音に硬化剤は避けるべきです。
もし使うとしたら高音部の硬い音を求める時のみです。

 銘弦堂
代表 三浦 晃一





お答えしますね。 私は反対です
先ず、状況判断の間違いと思い込みによる硬化剤の塗布についてですがYAMAHAのオリジナルハンマーは、音を均一にするためにかなり固めに設定されていて、平成以降の現代建築のアパートマンション一軒家等々密閉空間でエアコンたくだけの部屋のグランドでは、湿気を抜くだけの機能しかなく、音が固くなるしかない環境しかないです。私も毎回ハンマーをほぐすのに苦労してますね、環境によりますがほぼ半年以内に元に戻ります。なのに硬化剤等かなり悪手ですね。

単担当調律師の無知なのか若さゆえの過ちなのかは不明ですが、私にとっては単なる暴挙としか考えられない。

おそらく次の仕事に繋げようとか、古いピアノだから新しくしようとする作業なのかと思われます。

お客様が知らないことを良いことに、そんなことをする輩が少数存在をして居ますね。

過去に他社でアップライトピアノを買い換えさせるために、担当調律師に営業担当が指示してわざとらしく狂う調律をさせて後から新しいピアノを買わせる方法をやらかした、i県ひ、、、、、市のS社が居ましたの目論見を阻止した事例がありましたが、その類いですね。

今の世の中色々ありますから信頼のおけるこのサイトとかで検索して下さいね。

MUSIC TAKANO





質問を見た瞬間、硬化剤を塗らなくても良いのではないかと思いました。何故その調律師は硬化剤を塗ったりしたのか疑問ですね。



滋賀県米原市のピアノドクターChantsです。

今回の質問に回答致します。

ハンマーに硬化剤を塗るのは、羊毛を殺し もはやハンマーとは別物にする事と考えます。

ピアノが発展する過程で、初期のハンマーは鹿革など、動物の皮が使われて、より豊かな音を求めて現在の羊毛を圧縮した物になりました。

毛と毛の間に空気がある事で、クッションになり時には硬く時には柔らかい音を出す事が出来ます。

硬化剤を塗るということは、その空気の入る余地を密閉する事になり、モコモコした音を硬くする事は出来ても、響きは品のない物になってしまいます。

ハンマーの整形や、弾き込みで ある程度はしっかりした音にする事も出来ますので、硬化剤使用は当店では、取り扱わない作業です。


ピアノドクターChants 鳴海賢次



ハンマーに使用する硬化剤の種類や効能については、一般のピアノユーザー(お客様)のみならず、調律技術者の間でも理解が浸透していない様に思います。そもそも整音の技術(目的や理論、技法)そのものが正しく理解浸透されていない事がその遠因ではないでしょうか。
さて、硬化剤の使用について賛成かというご質問にお答えする前に、スタインウェイ(ハンブルグ)やベーゼンドルファーの整音部門で何十台も製品の仕上げをしながら整音を学んできた経験、あるいは何台ものコンサートホールのピアノのオーバーホール等で新しいハンマーに交換し、前述の工場で施している整音の手順を再現するように段階的に施して、厳しいピアニストの要求に耐えうる品質に仕上げてコンサートの現場に再投入してきた経験から申し上げますと、工場やオーバーホールの整音仕上げの際にすでに段階に応じて適切な硬化剤は必需品として使用されている、という事実を皆様にはお伝えしておこうと思います。ただし「これらの有名メーカーでも硬化剤が使われている」イコール「硬化剤は良いものだ」という短絡的な考えを起した技術者が、見よう見まねで使用の必要のない場面や、不適切な濃度や用量、不適切な種類(倍音を歪ませてしまうような成分が含有されている)のものを使用してしまい、一部のお客様を失望さてしまった結果、誤解や疑念を生んでいることも事実です。ご質問にあったピアノユーザー様のお知り合いの方の事例も、そういった不適切な場面で(十分な硬度があってそれ以上硬くする必要がない部分に)使用されたか、必要以上に濃度が濃いものが使用された可能性が考えられます。あるいは自然な倍音系列を歪ませてしまう成分が含まれた不適切な硬化剤が使用された結果かもしれません。いずれにせよ結果として高次倍音(カンカンした音)ばかりが目立ち、響板が豊かに振動しなくなった結果、音楽表現に大切な基音や低次の倍音の伸びに乏しい音になってしまっていると思われます。特に濃度の濃いものや、アセトン溶剤やアクリル樹脂、ザボンエナメルなどの成分を含んだ硬化剤は、たとえ一滴でも塗布されると、フェルトの性質(バネのような弾力構造)が機械的にあるいは化学的に変質して、その結果生じた音の違和を取り除くことが困難となります。つまり塗って変わってしまった音の違和感だけが残るのです。このような硬化剤は絶対に使われるべきではありません。また「お世辞にも豊かに響くという感じがしない」とお客様ががっかりする様な音の劣化に技術者が気付き使用を中止するべきです。
私自身は日々の業務で硬化剤(コロジオンと呼ばれるニトロセルロースの溶液を希釈したもの)を極く細い筆で塗布して使用しています。ニトロセルロースの弾性は、羊毛繊維の弾性と親和性が高く、例えば塗布されて必要な硬度に達し改善された音と、もともと適切な硬度で望ましい発音になっていた音との区別はつきません。(おそらくこれをお読みの皆さんのどなたにも区別はつかないと思います。)この様に塗っても違和感を感じない硬化剤であれば、必要に応じて使用することにより、不足している音の成分(基音や2倍音3倍音など低次の倍音)を補なう事ができます。結果としてハンマーそのものは硬化させたにもかかわらず、響板が豊かに弦の振動を拾う様になり、音はまろやかで深みや膨らみ、陰影や立体感が増し、ピアノが自在に歌うようになって弾くのが楽しくなった等、多くのお客様にお喜びいただいております。そしてどなたも硬化剤のことなど気にも留めないのです。
以上長くなりましたが、結論として硬化剤の使用の是非は、種類、用法、用量によりけり、つまり使う技術者の見識次第ではないかと思います。

株式会社クオルピア  倉田尚彦




硬化剤はハンマーフェルトが持つ本来の響きを止めてしまいます。理由はフェルト内の空気層を硬化剤がなくしてしまうからです。
整音時、ハンマーフェルトに針を刺して響きを出しますが
硬化剤はその逆になります。
私個人としましては、使用致しません。


昨年、先生からのご紹介のお宅に調律にお伺いしてまいりました。
ピアノは中国製、外観は立派なのですがお客様は音がイヤだとおっしゃいます。
「このキンキンした音なんとかなりませんか」私は即座に「今日はむりです」と答えました。
このピアノを整音するに当たって、まずハンマー整形それから第一整音・・・これだけ堅いハンマーどれだけ針入れたらよいのやら。
(第一整音とは。ハンマーの弦の当たる部分を頂点とすると頂点とフエルトの終わり、丁度真ん中周辺を刺します。初めて針刺しする場合片側3本針で30回程、両側で60回刺しますハンマーが1㎜位大きくなります。第二整音を含めると一つのハンマーに100回位針刺しをします。
フエルトハンマーの仕組みは三角のフエルトの頂点にハンマーウッドの頂点を当て巻き付けビョウで止めます、ですからフエルトの表面はゴムを引っ張っているようです。
第一整音はその引っ張っているフエルトの繊維をほぐし切る作業です。切られた繊維は頂点の方へと引っ張られ弾力を生み出します。第二整音からは個々の技をお持ちでしょうから説明は不要かと思います)
お客様には時間と費用(40000円を提示)をお伝えしたところ、「この安いピアノにそんなに掛けられないな」と保留。

今年調律に伺いました。音が穏やかになっておりました。
奥様が得意そうに「私が整音しました」・へええ~聞くと100円ショップで生け花用の剣山を買って悪戦苦闘したそうです。よい子は真似しないで下さい。

外国のYouTubeで驚きの整音方法発見いたしました。クリアーラカースプレーをハンマー全体に噴射。
束ねた釘で頂点を叩く。・・・・・後で修正出来るかも知れませんが・・・

本題です。
私は使う事あります。あくまで最後の手段です。
頂点を刺してしまっている どうにもならないハンマーはしょうがないでしょう。

針刺しでの注意点です。第一整音がされてないハンマー、頂点付近を重点的に刺しますと切れた繊維が逃げてしまい弾力の無いハンマーになってしまいます。硬化剤の出番になってしまいますよ?  ダメかも・・・ またフエルト割れの心配もあります。気をつけましょう。
私が使う硬化剤・コロジオン薄め液にジエテルエーテル(アルコールでも良い)

立川ピアノ調律技研



年に何台かハンマーに硬化剤が塗られたピアノに調律に伺います。キンキンシャンシャンとした含みのない音から明らかに硬化剤が塗られたことがわかります。針刺しで柔らかくすることを試みたこともありましたが、刺した直後は柔らかくなったように感じても、しばらくするとあの独特のキンキンシャンシャン音が戻ってきます。薬品がハンマーフェルトに残っているかぎり、いくら針刺しで柔らかくしようとしても無理なのです。結局はハンマーを交換するしか改善方法はないかと思います。中古のハンマーヘッドやハンマーアッセンブリーのセットを何台か持っていたときは、それを付け替えれば解決しましたが、それを使い果たしてからは、手間はかかりますが新品のハンマーヘッドと交換しています。その音のあまりの変りようにお客様は驚くとともに、大変満足していただいております。
モコモコとした鳴らないピアノは演奏者のストレスとなり、硬化剤を付けると確かに一気に明るい音になりますが、それはスポーツでいうドーピングと同じで、本当の明るさや実力ではありません。調律師にとってはよかれと思って塗布するのでしょうが、演奏者にとっては非音楽的な音以外の何ものでもありません。
確かに部品メーカーからはハンマー硬化剤という薬品が販売されております。元々は高音部のごく一部に使われる目的のようですが、全音域に塗られることは大問題かと思います。今のスタインウェイも高音部と低音部の一部に塗られているようです。しかし、それすら私には耐えられそうにありません。音を明るくするにはハンマーの表面を削る、手間はかかりますがこのほうがよほど音楽的で確実です。また、ハンマーの頂点をさけて周りに塗る方法もあるようですが、この場合はそれほど効果がないように思います。そして、少しでも薬品がハンマー頂点部に染みて音に直接影響を与えたらその時点でアウトです。
ピアノが鳴らない原因の多くが、ハンマーの頂点に針が深く刺されて音がこもってモコモコの状態になっているのです。これは調律師が音を柔らかくしようとして施行したケースですが、こもった音と柔らかい音は全く違います。決してハンマーの頂点に深く針を刺してはいけないのです。このこもった音の解決法はハンマーフェルトを削って間違った針刺しの部分を取り除けば明るい音が戻ってきます。その上で正しい針の刺し方をすることで音楽的な柔らかい音を作ることができます。削ることに抵抗があるユーザーも多いかもしれませんが、元々はハンマーの頂点に針を深く刺した技術者に責任があります。
本当に明るい音とはどういう音か、本当に柔らかい音とはどういう音か、それらは決して表面的なキンキンした音や、モコモコになった影のある音ではないのです。そのことがわからない技術者が平気で硬化剤を塗ったり、平気でハンマーの頂点に深く針を刺したりします。音程をしっかり調律で合わせることが出来ても、音色作りはまた別の調整です。勿論、間違った音色作りをされるくらいなら、まだ何もしないほうがいいことは確かです。しかし、本来技術者の真価は良い音色作りをしてこそ問われるものであると思います。

ピアノの森・調律工房
森 一夫





ピアノ調律.net 編集部


 




バックナンバー一覧


メルマガ登録・解除 ID: 0000236488
人気調律師達がやさしく語る♪ピアノと調律に役立つ話
   
バックナンバー powered by まぐまぐトップページへ

---------------------------------------------------------------------




■調律師への質問

ピアノや調律にかんして疑問・質問があれば、ぜひピアノ調律.netの登録調律師に質問してみてください。
読者のみなさんに参考になるご質問に関しては、調律師より回答し、メルマガ上で公開いたします。

具体的なご質問、どしどし、お寄せくださいませ。
お待ちしております。
質問・疑問はこちらのフォームから。


■執筆者への感想・メッセージ

感想・メッセージは、こちらのフォームから。
「~さんのメルマガ記事感想」と題して、記事の執筆者名を明記してお送りください。
いただいた感想は必ず執筆者までお届けします。
ただし、執筆者からのご返信は確約できかねますので、その点、どうぞご了承ください。

執筆者も、感想を楽しみにしていますので、どしどしお待ちしております。

---------------------------------------------------------------------

■ 
□■ ピアノ調律師は、もう自分で選ぶ時代です。 

好みのピアノ調律師を選べるサイト

----------------------------------------------------------------------
メールマガジン 【人気調律師達がやさしく語る♪ピアノと調律に役立つ話】
----------------------------------------------------------------------
□ 発行・編集 : ピアノ調律.net 
□ ウェブサイト : 「ピアノ調律.net」 
□ 配信期間 : 不定期
□ 社内・友人など転送はご自由です。
□ ご意見・ご感想はこちらからお願い致します!

----------------------------------------------------------------------
     Copyright (c) 2008 ピアノ調律.net. All rights reserved. 
----------------------------------------------------------------------